第一話〈8〉
4
さてその晩、
「おい
いい感じで進んでいた宿題の英語の和訳を
「電話だと言ってるだろうが!」
半ばドアを
「ルコ……」
「全く……人がせっかく気持ち良く
いや深夜って……まだ十時だろ? そりゃ早くはないがそこまで言うほど
と、ムダだと分かりつつもいちおう突っ込んではみるのだが。
「そんなものはどっちでもいい。教え込むという意味では同じだ」
全然
しかしもともと
「……ウルサイやつだな。とにかくいいからさっさと電話に出ろ。私は寝る。
子機を投げつけて、
そんなことを考えながらとりあえず電話に出る。
「はい、もしもし」
すると。
「あ、もしもし。
子機の向こうから、
「夜遅くにごめんなさい。実は、その綾瀬さんにお願いがあって……」
お願い? そのそこはかとなく心ときめく単語に何となく
「……
「聞いて……もらえますか?」
「え、あ、ああもちろん」
聞かないわけがありません。
「良かった……あの、綾瀬さん、これから私と会っていただけないでしょうか?」
「えっ……」
「えっと、会うって、二人で?」
「はい」
こんな時間に二人で会いたいって……まさか
頭をぶんぶんと
何とか心を静めようと頭の中で
「あの……実は、私といっしょに学園まで行ってほしいんです」
「学園?」
学園って……当然俺らが通っている
「……本を、返し
ウスバカゲロウの
「最初は……
「あのさ……本ってまさか」
例の『イノセント・スマイル』ですか?
「…………はい」
「……」
いやそりゃあ……かなりマズイんじゃないか。うちの学園、基本の校則はヘンに緩いクセに
「……そうなんです。もしも呼び出されることになったりしたら私、わ、私……ぐすっ」
考えられる
「だ、だから今から返しに行こうと思って。ぐすっ、で、でもこんな時間に一人で学園に行くのは……その
ナルホド。確かにその事情だと俺以外に
「あの、ぐすっ、だから……ダ、ダメですか? あ、
とはいえ、
だから。
「えっと、直接学園に行けばいいのか?」
「ぐすっ、えっ……」
受話器の向こうで
「行って……くださるんですか?」
「ああ、どうせやることもないし」
そうすることに決めた。まあ英語の宿題はまだ残っていたが、んなもんこの
「あ、ありがとう……ぐしゅ、本当にありがとう」
こうして、真夜中の学園に不法
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます