第四話〈2〉
春香と別れて下校しようとすると、校門のところで
「お~い、おに~さん」
「ん?」
見ると校門の
「
「へへ~、おに~さん、久しぶり」
たたたっと
「どうした?
「うん、用っていうか、ちょっとこの近くまで来たから寄ってみたの。いっしょに帰ろうと思って。お姉ちゃん、まだいる?」
「ああ。でも出てくるまでにはもう少しかかるんじゃないか」
「そ~なの? ね、おに~さん。だったらお姉ちゃんが来るまで話し相手になってくれない? せっかく会えたんだし。それともこれから何か用事でもある?」
「いや、
彼女がいるわけでもなしバイトをやっているわけでもなし、やることといえば七時までにルコの夕飯を作ることくらいである。俺の放課後のスケジュールは基本的に空きまくっているのだ。……自分で言ってて悲しいが。
「わ~い、やった」
ぴょんぴょんとその場で
「で、最近お姉ちゃんとの仲はどう?」
ひとしきり喜んだ後、美夏はいきなりそんなことを
「いやどうって言われても」
夏にいっしょに出かける
「う~ん、ダメダメだなあ。そんなんじゃ、おに~さんがお
そう言って、俺の
「お、おい」
「えへへ、ちょっとくらいならいいじゃん。わたし、お兄ちゃんも欲しかったんだよね~。今のところ、おに~さんが将来のお義兄ちゃん
美夏がイタズラっぽく笑う。
「それとも、おに~さんはわたしのこと、キライ?」
「いや、そういうわけじゃなくてだな……」
まあ何だかんだいって
ただ──
「人前でってのは、問題あると思うぞ……」
さっきから何やら
すれ
その中のいくつかが聞こえた。
「ね、あの子って中学生だよね? 何あれ、男の方がナンパしてるの?」
「でもさっき〝おに~さん〟って
「〝おに~さん〟ねえ……。それって本物じゃない〝パパ〟とかと
「うわ、最低」
別の集団からは、こんな声も聞こえた。
「なあ、あの子、すごいかわいくないか?」
「ああ。でも、何かだれかに
「だれだっけ?」
「うーん……」
「で、あの男は何してんだ。ナンパか?」
「
さらにはこんな声も。
「あれって二年の
「春香様に手を出しておきながら他の子をナンパだぁ?」
「しかも自分のことを〝おに~さん〟とか呼ばせて
「
「……
「
後半の方、ものすごく
身の
「あれ、おに~さん、顔が青いよ。どしたの、
美夏が顔をぐっと寄せてくる。
周囲からの視線が、
ここはとりあえず
「あー、
「あれ美夏? どうしてここにいるんですか?」
死線を
「あ、
ようやく
「お、おい、春香様だ……」
『
「春香様、あの女の子と知り合いなのか? 親しそうだぞ」
「あれって……もしかして美夏様か?」
「だれそれ?」
「お前知らねえのかよ、モグリか? 春香様の妹だ」
「そういえば顔、
「かわいい……」
「でもあいつ、何で春香様の妹とあんなに親しげに
「……まさか妹にも手を出してやがるんじゃ」
「フタマタ……」
その
「……おい、
「ラジャ」
周りの
「そ、それじゃ美夏、春香も来たことだし俺はこのへんで。春香もまた明日──」
「え~、せっかくだから
左腕に美夏がぶら下がってくる。
「あ、私もそれに賛成です。裕人さんといっしょに帰る
右腕の
「い、いや……」
それはもう
「ちょっといいかな、
「少しばかり話があるから、俺といっしょに校舎
その
「ああ、もちろん時間は取らせないからさ。……
にっこりと笑ってそう言うが、目が全く笑っていない。
あからさまな
「何だ、おに~さん、友達と
「お友達との約束なら仕方がないです。
二人そろってにっこり。
「全然
アイコンタクトは失敗だった。
「じゃ~ね、おに~さん」
「さようなら、
姉妹の
「ああ、キミはこっちだから。
半ば引きずられるようにして春香たちとは反対方向へ連れて行かれる俺。
その後、
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