第11尾影の少女と無銘の狐

「…お前は妖狐ではない。」

「何、言ってるの先生。私はアリス、有栖川妖狐だよ。」

「いや、違うお前はアリスではない。お前は…。」

 さかのぼること、半日ぐらい。

「さて、やっとご飯にありつける。」

「よーこ。一緒に、ご飯食べようよ。」

「いいけど、何で私かな影美かげみちゃん?」

「んー、何となく、あと暇そうだったから。」

「ふーん。あっ、そうだ屋上で食べない?今日は晴天だから。」

「おっ、いいね!行こう。」

 この那騎袖高校は、屋上を解放している。理由としては、校長が『自由に使って欲しい』とのことらしい。生徒は、多く出入りしており結構人気のあるスポットである。噂で、恋人が告白すると恋愛が成就して、将来の約束が確約されているらしい。

「さて、着いたはいいけど、結構人が多い。場所あるかな?」

「あったよ。日陰になっている所を見つけたよ。」

 アリスは、影美に言われた場所に移動した。そして、昼食を食べ終え、中に戻ろうとした時アリスは影美に肩を掴まれた。

「何処へ行こうしているんだ、有栖川妖狐。お前はに来るんだ。」

「…どうしたの影美ちゃん、何言ってるのか、分からないよ。」

「お前は私達、妖怪の部類だ。だから、人の振りをせず、妖怪らしく生活していけば…。」

「嫌だね。はぁー…、少なくとも私達、妖怪狐の一族は何の為に里を持っているのよ。」

「ならここで倒してやるよ。有栖川妖狐!」

「悪いけど、今日は、戦う気力は全く無いから逃げの一択でとんずらさせてもらうよ。」

 そう言ったアリスは、屋上から飛び降りて着地して逃げた。影美は、追いかけようとしたが、距離が遠く無理があるため諦めたが、アリスを追うことは諦めていなかった。

 さて、アリスはと言うと…、珍しく職員室に入っていった。稲瀬荷穂に用があるようだ。

「先生!稲瀬先生!」

「どうしたの有栖川妖狐…さん。」

「んー、どったの妖狐、そんなに急いで、何の用だ。」

「どったのって…、あれ? 美銅みどう先生と言野ことの先生だけですか、じゃなくてちょっと話を聞いて下さい。」

 と、妖狐は教師二人に影美の事を話した。

「…そんな事を言っていたのか影美アイツは。何だろう、空気が変わっている。ちょっと、気を探る。げっ、噂をすれば来やがった! 言野先生、警戒お願いします。」

「…了解しました。妖狐さんは奥に行って、隠れてなさい、いいね。」

「分かった」と言って妖狐は職員室の最奥の部屋に入って隠れた。

「…職員室。先生はいますか? 」

「はい、はいとあら、影美さん、どうかしましたか?」

「…直に、聞きますが、アリスはいますか?正直に答えて下さい。」

「さぁ、どうだかね。でも、姿はみたよ。用はそれだけですか?もう時間になるから教室に戻りなさい。」

「…分かりました。」

 と、影美は職員室を後にした。そして、静かになるのが分かったとき、ヒョコっと妖狐が出てきた。

「…やっと、行ったみたいだね。」

「そう言えば妖狐さん、あなた戦えばよかったのでは? 」

「…今回は戦うのはダメと、言う私の勘が囁いた気がしたので。」

「そうですが…。」

「そう言う言野先生こそ、使えばよかったじゃん。先生のact、『言葉の重み(ワードフィール)』をさ。」

「…私も同じ理由です。」

「そうですか…。あっ、今日は早退します。」

 そして、夕方稲瀬荷穂が出張から戻って来た。

「はぁ~、やっと出張から戻ってきたよ…。よん、どうした、アリス。」

「先生、待っていましたよ。少しお話しましょうよ。」

「少し待ってくれ、荷物を置いてくるから。」

「では、体育館の裏辺りで待っていますよ。」

 ~5分後~

「待っていましたよ。稲瀬先生、いや、イナホさん。」

「…お前、アリス、いや、有栖川妖狐ではないな。」

 そして、冒頭のやり取りになり、現在に至る…。

「お前は『二崎影美にさきかげみ』だろ。いい加減、正体を現せ。」

「何で、分かったんですか。」

「勘が、少しと『イナホ』と言うワード、そして、暗く影になるところを好むそう言う系統のactと推測した結果だよ。まず、『イナホ』のワードは私の知人が言う言葉であること。そして、お前のact、『二重の影(デュアルゲンガー)』の一つである影になるところは自身以外の姿に成りきる能力と言うことだ。」

「推理力は大したものですよ。でも、能力の方はどうですかね。」

 そう言った影美は影を使って攻撃したが、荷穂は何処から出てきた刀で、影美の攻撃を捌いた。

「…悪いが私のactは名はない、いや、強いて言うなれば『無銘の狐』だ。そしてこの刀の名前は、『無銘』だ。」

 そう言った荷穂は影美に近づくが、影美は陰の中に消え失せた。

「出てこい、…ちっ、アイツめグラウンドの方へ行ったか。」

 一方、影美は荷穂の予想通りグラウンドの方に走っていた。

「…光のあるグラウンドの方へ行かないと。」

「おーい、影美。何処へ行くんだ。私はここにいるぞっと…。」

「『二重の影』モード光(リヒト)、今の私は二人ですよ。」

 影美のactは影(シャッテン)のモードと光(リヒト)のモードの二つある。この二つのモードの説明をしよう、シャッテンは影を使い攻撃したり、影の中に隠れるとこができる。そして、リヒトのモードは分身できる力であり、太陽の光以外の光で発動するactである。

「さぁ、先生2対1の形ですけど、どうします? 降参するなら、今の内ですよ。」

「ナメるな、私はお前の教師だぞ。二人相手は訳ないぞ。」

 そう言った二人は激突した。その衝突に空気が揺れ、衝撃波が出てきた。互いに譲らない戦いになった。

「…なかなかやるじゃいか、影美。でも、妖狐には及ばん。」

「まだですよ、私の取って置きは、これからです!」

 そう言った影美の影が巨大な化け物の形を型取った。

「これが私の大技、『悪夢の影送り(ナイトメア・シャドーゲイン)』!! 」

「悪いが、これで終わりにする。」

「いけ、先生を攻撃しろ! 」

 大きな怪物は荷穂に攻撃したが、荷穂はその攻撃をかわし、

「言っただろう。これで終わりだと…。」

 そう言った荷穂は『無銘』の一撃を怪物に食らわせ、影美に刃を突き立てた。

「どうだ、影美これでもまだ、戦う気か? 」

「…もう、いいです。わた、しの負けで、す。」

 影美は泣いた、自分の種族、影一族の事を思い出していた。

「どうした、話があるなら、聞くことぐらい出きるだろう…。」

 そして、翌日…。

「ごめん、妖狐、あなたの姿を使って稲瀬先生を騙すような、真似をして…本当にごめんなさい。」

「んー、別にいいけど。先生と戦うことぐらいだったらいいけど、男子共をたぶらかすこととか、いやらしいことだったら私は許さないからね。」

 と妖狐は影美に警告した。

 そして、

「おーい、席に着け、朝がホームルームをするぞー。後、影美はこれ終わったら、私の所へこい。」

 その後、影美と荷穂は職員室の奥の部屋で話しをした。

「と、言うわけで影美、お前を呼び出したのは他でもない影一族のことだ、影一族は妖怪の中である程度有名だったがあの時、お前が話してくれた『影一族惨殺事件』。そして、お前は数少ない目撃者であり…」

「ふーん、あの時の子まだいたんだ、また遊んであげるよ。ねぇ二崎影美ちゃん。」

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