第20尾.暴食する蝿龍(ライイット・ドラッヘ)

 さて、妖狐の記憶の話から数時間経ち、昼下がりになる。妖狐は導狐から「気分転換に」と稽古をしていた。

「……はぁ! 」

「ほう、帯電か、なかなかやるな妖狐。」

「いきますよ。……いや、今は止めます。

 導狐さん、向こうの方から、私達と同じ、狐の気を感じます。だから、今日は、これくらいにしませんか? 」

「む、そうだな。今日はこれくらいにしておこう。」

「妖狐! 導狐! 血だらけの女性が玄関で倒れています。早く手当てを! 」

 そう言った、晴明が出て来て、二人は玄関へと向かった。

「早く運んで……、ってこの人は『菊狐』さん! 大丈夫ですか、菊狐さん! 」

「早く逃げろ。さもなくば……。」

「喋るな! 詳しいことは、治療してからだ! 妖狐、手伝ってくれ! 」

「了解! 」

「二人共、そっちは頼みました。私は、勝龍しょうりゅう神社に行きます。龍神様にこの事を伝えなければいけないので。」

 晴明は勝龍神社へ行き、二人は菊狐の治療に専念した。

「菊狐さん、大丈夫かな……? 」

「さて、治療はしといたから、後は目覚めるのを待つだけだ。」


 そして、2時間ぐらいが経過した。

「里が! こ、ここは。」

「導狐さん、菊狐さんが目覚めました。大丈夫ですか。『里が! 』と、言ってましたが、何がありましたか? 」

「えっと、姫、様です、か? 」

「そうだよ、私、泡狐うたこ様の娘、『有栖川妖狐』だよ。さて、菊狐さん。里に何があったの。教えてくれない? 」

「そうでした。私は、その為にここに来たのでした。実は、里に襲撃を、受けまして。」

「で、どんなやつが来たんだ。教えてくれ、

 菊狐。」

「……天使です。けど、天使でも、あいつらは、堕天使でした。そして、あいつらは7人いました。」

「7人……。そして、堕天使。この2つのワードで思い付くのは、」

「七つの大罪か、妖狐。」

「そうです、導狐さん。でも何故この時期なんでしょう? 」

「さぁ? でも、姫様の約束がここで果たされてしまうとは……。私は複雑な気分です。」

「菊狐さん、それはそれだよ。」

「それはそうと、晴明様が来るまで大丈夫か、どうか。」

「皆さん、龍神様に報告してきました。この街に結界を、……少し遅かったか、皆さん構えて下さい。噂をすれば何とやら。来ますよ! 」

 上空から、1人の少女が現れた。見た目は妖狐より少し幼く、12、3ぐらいでツインテールのゴスロリの格好をしている。

 そして妖狐達の方へ近づいてきた。

「……私は、『ベル・スナッチ・ヴィゼル』。七つの罪が1人、暴食(ライイット)ベルとは、私。」

「ヤバいね。三人共、勝龍神社へ。早く! 」

「……頑張ってくれ。」

「頼みました。」

「姫様……。」

 三人は、龍神のいる勝龍神社へと向かった。

「さて、こっから先は行かせないよ。」

 妖狐は、少し電気を出してベルに威嚇した。

「……私も、act出す。来て、『暴食する蝿龍(ライイット・ドラッヘ)』。」

 そう言ったベルの背後から蝿の形をした大きな龍がでてきた。

「い、今、ドラッヘって! 」

「……そう、私の龍は、最近新しく出た、

 虫龍。」

虫龍ちゅうりゅう」とは、鎧のような甲殻を持ち、強靭な力を持つ最近発見された虫の見た目をした、龍である。

「……あなた龍成と気が合いそうね。」

「……そう、あなたは私のエサ。食べられる為のエサでしかない、だからじっくりとなぶり殺しにしてあげる。」

「まて、ベル。今はまだ戦う時ではない。おい、そこの狐の娘よ、今から一週間の暇を与える。我ら、七つの大罪(セプトシンズ)がお前を倒しに来る。だから……。」

「待った、1対7はさすがにヤバいので、私を含めた、7人で対決しよう。」

「む、そうか、その方が面白い。おい、狐の娘よ、名をなんと申す? 」

「私は『有栖川妖狐』。あなたは? 」

「サンタ『サンタ・アモデウス』憤怒の罪をしている者である。そう言えば場所をいっていなかったな。場所は、幻妖界にある『天使の舞闘場』だ。」

 ベルは不服そうに、サンタは少し笑みを浮かべながら、大罪人、2人は元の場所へ帰った。


 妖狐の前に現れた、七つの大罪を名を持つ堕天使達、妖狐は残り6人の仲間を見つけ出し決戦へと迎えられるのか……。

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