第7尾穹星神話祭(妖狐と鏡界の番人)

 穹星神話祭の最大の見せ場である文化祭。ここの文化祭は一般公開もしており、休日でありながらそれなりの賑わいがある。特に見物なのは三年生が演じる演劇はなかなかの見応えがある。

 さて、そんな中、1ーC妖狐達の催し物は『御伽の国・アリスワールド』と言う迷路に似たトリックアート展である。1ーCの生徒が、案内と説明する係である。男子はタキシードで、女子はアリスコスで案内する仕様である。が、しかし妖狐だけがいない、そう妖狐だけ…。

「どこ、ここは私確か…。」

「やぁ、アリスちゃん。ここは『鏡界』だよ、アリスちゃん。いつも来ているけど、全体を見るのは初めてかな?で、ここなら誰も来ないし、二人きりで話せるからね。」

「…何故、こんな所に連れてきたのですか。『因幡宇佐美いなばうさみ』先輩。私をそんな風に呼ぶのはあなたかムカつく、アイツ。そう『チシャ』ぐらいですよ。で、何のようですか、因幡先輩。」

「んー、ただアリスちゃんとお話をしようとね? 」

「私は今、文化祭の最中でしたので手短にお願いしますよ。」

「あー、そんな季節かー。ビックリ。」

「ダウト! 嘘をつかないで下さい。因幡先輩、ずっと鏡から見続けているのは知っていますから。」

「ありゃ、バレていたのか。と言うより、アリスちゃん『読心術』を持っているものね。じゃっ、何かゲームでもしない。ゲームしながらお話しようよ。」

「ゲームですか、…どんなゲームを所望ですか先輩。」

「んー…。トランプで出来る、ポーカーでどうかな。」

「ポーカーですか…。いいですけど、勝負回数を制限させてもらいます。3回でやりましょう。これでどうですか?」

「3回か、んー。いいよ、じゃあ私が親やるね。」

「お好きにどうぞ先輩。」

 そんなことをしているのを知らずに人間界の龍成達はというと、

「あれ?妖狐はどうした。確か次は妖狐だが…。」

「そう言えばいませんね、妖狐さん…。あっ、お姉ちゃんからだ。えっと、『妖狐は宇佐美が連れ出しているから、(人間界)にはいないよ。』だって、因幡先輩なら仕方無いか。」

「宇佐美先輩って…。あっ、思い出した、オッドアイのウサギ耳の人か!でも、どういうことだ、妖狐に用事って、こんなクソ忙しい時に…。後で問い質してやる。」

「ま、まぁあの人は気まぐれだから仕方無いよ。」

 そんな会話をしている二人は妖狐のことを心配しながら仕事に戻った。そして、肝心な妖狐の様子は、

「はい、私の勝ち。じゃあ約束通り人間界に帰してあげる。次は私に一つでも勝ちが取れるといいね。」

 そう因幡は言い残すと、周りの不思議な空間は無くなり那騎袖高校の廊下に戻って来た。そしてようやく二人と合流でき、妖狐は仕事に戻った。

「アリスちゃん、いや、有栖川妖狐よ次はこの高校か、あなたがピンチになったら来るよ。その時まで頑張ってくれたまえ。」

 そして、そのまま打ち上げへと進んだ

「妖狐、今日はどこにいた。」

「鏡の世界にいました。そのお陰で少し嫌な気分ですよ、先生。」

「…oh。そうですか、イナバさんがいますね。」

「そうか、それなら仕方無いな、ほら元気だして、打ち上げにはいるぞ!」

 と言うことで、今年の穹星神話祭は幕を閉じた。

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