妖狐の秘密 壱

第玖尾狐ノ禊祓イ

「ごめん、龍成、今日から一週間休むね。」

 そう言った妖狐の電話から龍成は少し驚いたが、概ね理解した。

「えっと。アレか例の祭りでに戻るからだろう。」

「あー…。そんなところかな。あっと、呼んでいるからもう切るね。」

 と、妖狐の通話が切れて、龍成との会話が終わった。

 と言うことで、龍成が言っていた『向こうの世界』と『例の祭り』とは、何か説明しよう。

まず向こうの世界についてだが、これは幻妖界と言うところであり、妖怪や幻獣、神等が住んでいる世界であり、そこに妖怪狐の一族が住んでいる『狐の里』がある。


 そして、例の祭りとは、『狐ノ禊祓イ』が正式な名称だが最近は、『狐達の例大祭』と呼ぶのが多い。祭りの内容は狐の里で長である狐の領主(今は三代目の泡狐を示す。)に対して感謝いの気持ちを表し、献上品をあげる、そんな祭りである。が、現在の祭りは、人間界の祭りに近く、出店や屋台を出していたり、くじ引きをしたりするのが多い。

 前の領主、二代目の言い分は、

「えっ、あの代の祭りの感想を言え?んー、そうだな…ただ、ただ献上品を貰って、ずっとそこにいるだけで、つまらんかったな。あっそうそう、たまに貰う人間界からの送り物は面白かったな。えっと、CDとかDVDだったかな、アレはいい暇潰しになったと、思うぞ。まぁこっそり分霊使って外に出たけど。」

との事らしい。


 妖狐一行は狐の里に着いた。

「やっと着いた、ここに来るのにどれだけかかったか…。途中、因幡先輩に会った時はひやひやしたよ。」

「そう言えば私が買い与えた麻雀セットどうなったか…。」

「えっ、先輩そんな物献上したんですか? 」

「あぁ、ちょっと数年前ね、牌と台と解説してる本を献上したけど。」

 若干、引いた二人はある店を見つけた。

「麻雀する店を見つけたんですけど…。しかも何軒かあるのですが、先輩…。」

「おっ、早速やろうかな、二人は適当に時間潰して来なよ。」

 と言い残し店に入ってしまった。

「どうする、妖狐…。」

「仕方無いから三代目もとい、泡狐様に会って時間潰そう、先生。」

「今は職務してないからイナホでいい…。」

 そんなことで、里で一番大きな社を目指して二人は三代目に会うことにした。

そして歩くこと数十分のこと。

「泡狐様、来ました。どれぐらいですかね。」

「うむ、よく来た二人共ゆっくりしていくがよい。そう言えば今、季節は何月だ?」

 と、泡狐が側近に聞くと、

「今は霜月です。」

「と言うことだから約三月ぐらいかのう?」

「…そうですか。今、先輩は麻雀しています。」

「んー麻雀? 麻雀ってあれかな、襟狐が持って来た台でするやつかな? 」

「はい、それです。今、里で流行っていますね。」

「そうだね。まぁ、私には分からないからどうでもいいけど。」

「…そう言えば、『鏡花』と『水月』の二人は、何していました? 」

「あー…、あの二人なら、二代目様と一緒にを作っていたね、と言っても二代目様は殆ど手伝ってないけどね。」

「アレですか…。アレって何でしたっけ? 」

「んー、そう言えば、何だっけ?まぁ、屋敷に

行けば分かるかもしれないね。」

「そうですね。では、祭りの準備を手伝いますね。」

「あのあたり――、に似てますね。」

「そうだな――、に似とるの。」

そう、二人は言った。そして妖狐の方に視点を移す。

「おーい、おじさん! 手伝おうか? 」

「ん、ようこか見ない内に大きくなったな、こんなにちんまいのがこんなに美人になるとはなー。で、何のようだ。」

「おじさん何言ってんの?でも、美人は嬉しいな。」

 そんなやりとりをして、祭りの準備は着々と進み、そして翌日。祭りの開催である。里が賑わう様子が伺える。多くの出店があり、楽しい感じが伝わる。


 そして、事件が起こった。


「お、外(人間界)の物か、(一つぐらい食べてもいいよね。)」

そして泡狐は一時間後で倒れてしまった。が、しかし祭りは続いている。妖狐はふと思った。

「そう言えば何で、三代目様は倒れたんだろう?」

「何者かによって、毒を盛られたらしい。でもどうすれば…。」

「カッカッカッ、こう言うのを待っていました。イナホ、私が推理するから黙ってくれ。…な~る。多分この里の中に裏切り者がいる。多分、他人の所持物や衣服を奪い、その奪った人物になるact、その名も『天の邪鬼の掌(ジャック・リバース)』と言ったところかな。二人共、二代目様のところに行くぞ!」

 三人は鍛治場のある大きな屋敷に走った。


 着くやいなや大きな声で「二代目様ー!いませんかー?」と言った。そして、ドタドタと三人ぐらいの足音がした。

「どうした妖狐、緊急事態か!」

 と、二代目が現れ、妖狐はこれまでの経緯を話した。

「…すまんが、当の本人は元気だが。」

「えっと、泡狐さんまさか…。」

「分霊を使っていたがそれが? と言うより、忘れたか妖狐、一部の妖怪狐の一族は『未来予知』できることを。」

「なるほど、それでですか…。」

「んー、でもこの中と言っても多過ぎるしどう調べるのか…。」

「それだったら私に考えがある。」

「妖狐、戦うつもりならこれを持ってけ!作った例のだ二対一刀の小太刀、『狂渦きょうか』『粋抉すいげつ』だ!これの初陣を飾ってこい。使い勝手が良く、切れ味は抜群だ。あと、『金色狐・慟哭』は返してくれないか?」

「今返しますね。」

「悪いなこの刀は家宝なんだ。」

「いいえ」と妖狐は返事をして、祭りへ戻った。

「もう使わないだろうこの時代は…。」

 三人は、祭りの最中で人数が多く混んでいてみえずらい。

大人二人は人数が多いところを、妖狐は出口辺りで、待っている。

「へっへっへっ、これで大事おおごとに…」

「ならないよ、そんなことさせないけど。そうでしょ、屋台おじさん、いや、天の邪鬼!」

「そうか、バレてしまっては、仕方無いな。でも幸運にも何もない、ここでお前を倒せば事態が広がり、てんてこ舞いと言う訳だ。」

「早速だけど、この小太刀達の性能を試させてもらうよ!」

「悪いが、ここで消えて貰うぞ、狐ェ!」

 そう言った天の邪鬼は妖狐に襲い掛かるが消え、空中に現れ『狂渦』を振るうと妖狐は驚いた。

「わ!軽い、何この軽さ、持って振るって初めて分かる。凄いよ、この小太刀。さて、お前を倒すのに一撃で充分だよ。『剣撃剣舞・二刀太刀鋏』!」

 妖狐は小太刀の刃を、重ね合わせた。そして前に出た瞬間、瞬きするかの速さで、攻撃し、天の邪鬼を倒した。

「安心して、峰打ちだから。」

 そして、二人と合流し、天の邪鬼を捕らえた。それで、その天の邪鬼はお尋ね者だったらしい。

翌日、祭り二日目、この日は里の一族が長(泡狐)に献上品をあげる日である。

「で、二人は何をあげたの? 」

「何って、私は、私が描いたマンガと、ゲームを少々、10本程だけど。」

「いや、10本は少々とは言えないよ母さん…。」

「私は妥当にお花とぬいぐるみだね。そう言う妖狐は何にしたの? 」

「私はお菓子と、イラストを一つです。」

妖狐達が送った献上は泡狐のもとに届く。そして、その反応は、

「んー、これは襟狐か、ふむ、なるほど、W☆A☆K☆A☆R☆A☆N! これをどうしろと言うんだ! ん? もう一つある、書物だなふむふむ、なかなか面白いのでも、ただ何と言うか、いやらしいのは少なくしてほしいの。そして、花束とキツネのぬいぐるみか、ふつうだな! で、これはお菓子かの、しかも洋菓子ではないか、それと、大きな絵かの上手く描けておるの。」

 と、言うような感想があるが、三人は知る由もない。

 そして祭り最終日、泡狐の代で入れた催し物、泡狐と戦うことができるイベントである。これは泡狐に勝ったら泡狐の献上品を一つ無条件で貰える。が、今までこの里で泡狐に勝った者はいない。勝てたとしても、二代目である。(でも、二代目は参加しない。)

「さて、私の刀達は何処まで行けるのだろう…。」

 と言って妖狐は参加を示した。この催し物の参加人数は、50~60人ぐらいである。

「さて、集まったかの、ふむ、62人と、言ったとこかの。今回は全員で来るがよい。まとめて相手にしてやる! 」

 早速、合図を出すやいなや乱闘戦が始まる。あっちでは、爆発を起こし、こっちでは風を起こし、と正にどんちゃん騒ぎである。肝心の妖狐は、じっとその場で立っている。

 そして、場が収まる頃には死屍累々の雰囲気である。妖狐は泡狐のもとへと歩いた。二振の小太刀と一振の太刀を腰にさげて。

泡狐は全く疲れた様子もなく息一つしていない。

「やっと来たか妖狐どいつもこいつもあまりにも面白くないから、退屈していたぞ。さぁ、早う来い。」

「言われなくても、行きますよっ! 」

妖狐は二つの小太刀を抜き、泡狐の顔めがけて、

「『剣撃剣舞・狐対双牙斬(こついそうがざん)』!! 」

 を放つが、泡狐は

「甘い。」

 と妖狐に背負い投げをし、妖狐を伏した。

「どうする? このままやるかえ、妖狐。」

「…いや、止めておきます。これ以上戦うのは無駄なので。」

 そして、妖狐達が人間界に帰る日。

「襟狐、くれぐれも妖狐を頼むぞ。」

「泡狐様も里のことお願いします。」

 それぞれの頼み事をして妖狐達は帰った。

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