12話 粒子ドライバー・トロン Bパート

「オレはヒーローじゃない。ギアロードになれなくてもいい。大切なものを守るんだ!」

 ジュンヤの叫びを聞いたアキラが、わずかに表情を緩める。

「ヒーローかどうかを決めるのは、お前じゃないだろ? 粒子りゅうしドライバー・トロン」

 青年は、廃工場の入り口から見守っていた。二人の戦いに手を出す様子はない。こげ茶色のロングコートは、前が開いていない。

 誰かを思う心が、トロンに力を与える。設計者の願いどおりに。


「ガキの分際で!」

「そんなことは関係ない。ギアロード・ソーグは、お前のものじゃない」

 ギアロードだけではなく、全ての趣味を愛する者たちのため、ジュンヤは戦う。

 青い粒子りゅうしドライバーが、力強く構える。

 ペジ・タイプピーの力で、鉄骨を操ることを阻止。

 ペジ・タイプダブリューの力で、受け流す力を弱めた。

 ペジ・タイプジーの力を使う。

 近づいて掌底突しょうていづきの牽制けんせい。そこから意表を突く、うしり。

 ツバキから教わった多彩な技を繰り出す、トロン。ゲミオンの防御を崩した。

「なぜだ。俺は究極きゅうきょくのギアを使ってるんだぞ。こんな小僧に!」

 ジュンヤは、その答えを持っていない。

 シグスの力で質量しつりょうを増し、攻撃を加える。つぎつぎと有効打が決まっていく。吹き飛んだ白い男が、すぐに立ち上がる。

「ファイナルアーツ」

 押されるゲミオンが宣言して、両手が光る。

「認めねぇ。こいつは、ギアロードじゃないだろうが」

「ファイナルアーツ!」

 トロンも応戦する。相互作用そうごさようを見えない壁に変えて、宙を蹴った。あらゆる粒子りゅうしを乗りこなすさまは、まさに粒子りゅうしドライバー。

「オレは、オレだ!」

 足を光らせ、キックを繰り出すトロン。

 手から発生させた剣で、ギアロードフォトンバスターを放つゲミオン。

 ふたつのファイナルアーツが激突した。増していく光。

 見守る者たちが息をのむ。

 映像を見るフワたちも。

 お互いのダメージが限界を超えた。ギアにひびが入る。

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