5話 強敵 Bパート

「ダメだ。わかんねー。どうなってんだよ」

 活発そうな少年が、右へ左へといそがしく動く。すそは七分丈で、そでも長くない。

 自分の部屋で、ジュンヤは頭を抱えていた。机の周りを、うろうろと歩き回る。銀色の装置を見ながら、何度もうなっている。

 考えているのは、TV番組のギアロード・ソーグと違う部分。

 なんで、新しい力でも怪人かいじんと互角なんだ。それに、たくさん出てこない。次々とやっつけて、エスツーの幹部かんぶ怪人かいじんと戦うのに。

 少年に答えが分かるはずもない。

鳥怪人とりかいじんとか、ほかの形は、いつ出てくるんだよ」

 考えることをやめたジュンヤは、宿題を取り出した。次に、ソーグのベルトをつかむ。引き出しの中へとしまった。


「おかしいな。新商品の発売なのに、ジュンヤが来ない」

 小さなおもちゃ屋の中で、店員がつぶやいた。ソーグのベルトと組み合わせて遊べる新商品。その名も、デトンチップ。売り切れてはいないものの、人気がある。

 再入荷されたベルトの売れ行きもいい。店内には、ヒーローにあこがれる客が何人かいた。

 外を、二人の男が歩いている。風を防ぎやすそうな服装。歩道にならぶ街路樹がいろじゅと何度もすれ違う。大きな建物にはさまれた小さな店のドアに、手が伸ばされた。

「いらっしゃい」

 店員のサブロウが、笑顔で挨拶あいさつをした。開かれたガラス製のドアは自動的に閉まる。冷房が必要ない季節のため、温度変化はない。

 客の一人は、背が低めの男。もう一人は、体格が良すぎて迫力のある男。

変身へんしんできるベルトについて知らないか?」

 見た目とは違い、落ち着いた声の大男。横が刈り上げられた髪型。頭の上を短く残し、境目はなめらかにつながっている。

「大人用は、専用のサービスがあるので、そちらで――」

「そうじゃない。分かるだろ?」

 背が低めの男が、見た目よりも強い言葉を発した。髪は真ん中に寄せて、すこし立たせている。

 エプロン姿の店員は慌てている。笑顔をたもとうとして、苦笑いになる。

「子供たちが本気にするから、やめてください」

 何も言わずに、二人の男は店から出ていった。

 ちいさな客たちから、サブロウに質問が飛ぶことになったのは言うまでもない。クセのある短髪がいじられる。

「だから、僕は関係ないって」

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