11話 拳。シグス改 Aパート

 ジュンヤとアキラが変身へんしんした。

 映像が送られる。灰色の部屋にある画面に、白色とオレンジ色が映し出された。

 見守るのは、三人の青年だけではない。少女と、その祖父もいる。千古せんこライト。量子力学りょうしりきがくに詳しいことは、いまは関係ない。どっしりと椅子に座っている。保護者として同席していた。


「トロンの邪魔じゃまをしたくない」

 アキラと同じ声がした。加工されていないためだ。

 銀色のシグスかいが、オレンジ色のデトンプラスを手招きした。

 あっさりと応じることへの意見はない。別の言葉を言うため、白色のゲミオンが口をはさむ。

「なぜ、自分でトロンに変身しなかった?」

「思ったとおりに動けるシグスのほうが、おれに合っている。それだけだ」

 建物の外へと向かう二人を、トロンは振り返らない。

 ゲミオンへと変身したエイスケには、分かっていた。アキラの思考能力が高すぎて、体が追いついていないということを。

 シグスかいもデトンプラスも、制限時間がない。これは試行錯誤しこうさくごによるもの。

 エイスケが時間をかけてギアを改良した工程を、アキラは短時間でやってのけた。

 思考が伝達されて体が動くまでには、若干時間がかかる。それすらも遅く感じるほどに卓越した思考能力を持つ。そう考えるエイスケは、アキラを妬んでいた。

「その才能が邪魔だ!」

 声を荒げるエイスケ。

 意に介さず、アキラとサブロウは背を向けて出ていく。

 建物の中では、ジュンヤがエイスケと。いや、トロンがゲミオンと対峙する。

「トロン、使用開始しようかいし!」

使用開始しようかいし

「ノウリョク、シヨウカノウ」

「ノウリョク、シヨウカノウ」

 声がバラバラに響いて、青と白の力が解放された。

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