11話 拳。シグス改 Cパート

「ファイナルアーツ」

 最後の技を宣言したアキラが、相手の動きを鈍らせた。

 サブロウは、ゆっくりと立ち上がることしかできない。

 赤色の光が差し込むなか、銀色の右腕が構えられた。オレンジ色にとどめを刺そうとしたところで、女性の声が響く。

「家族は安全なところに避難させたから、戦う必要はないから。だから!」

 スーツ姿のツバキが、大声で叫んだ。エイスケの指示ではない。自分の意思で。長い髪が風でなびく。

 遅かった。

 すでにファイナルアーツは放たれていた。スペースパンチが改良ギアに直撃した。

 赤いギアにヒビが入っていく。


 映像を見るフワが、口元を両手で覆う。

 三人の青年と一人の年配男性は、心配そうに少女を見つめた。

 そこに、少女の兄から通信が入る。


 サブロウの変身へんしん解除かいじょされた。

 本来なら言うべき言葉を言っていない。ひざから崩れ落ちて、倒れた。

解除かいじょ

 通信を終えて、アキラがつぶやいた。光に包まれ、変身へんしん解除かいじょされる。光が消えた。

 こげ茶色のロングコートを地面につけ、赤いギアを手に取る。ソーグのベルトと呼ばれて利用されていた、改良ギアを回収した。壊れている。もう変身へんしんはできない。

「目的は果たした」

 立ち上がり、工場のほうへ向かうアキラ。

 ツバキがサブロウに駆け寄った。泣きそうな顔になる。男性は、息をしていた。

 振り返ったアキラが、うずくまる人物に向けて問う。

「お前はどうする?」

「……」

 返事はなく、アキラが前を向いた。ふたたび歩き出す。

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