粒子ドライバー・ソーグ

２話 ベルトの所有者 Ｄパート

『ここ？』

『機山（きやま）って書いてあるでしょ？　テンペンが所有（しょゆう）する採石場（さいせきじょう）よ』

　ソーグを支援（しえん）するための簡易機関（かんいきかん）は、その役目（やくめ）を成（な）し遂（と）げた。コロンに何人がどういう状態（じょうたい）で関わっているのかを、いまのソーグに知ることはできない。

『思ってたよりも山だった。そのおかげで、あんまり人に会わなかったけど』

『ペジ・タイプピーが近くにいるはず。気（き）を付（つ）けて』

　最初（さいしょ）に戦ったのも、同じタイプ。名前の由来（ゆらい）をよく知らないというツバキに、ソーグの中の人はそれ以上聞かなかった。

　火薬（かやく）を使うことのできる広い土地。ほこりが舞（ま）うなか現（あらわ）れる、黒い怪人（かいじん）。前を向いたソーグが構（かま）える。

『こんなところで、何をするつもりだ！』

　ヒーローの叫（さけ）びに返事（へんじ）はなく、怪人（かいじん）が機敏（きびん）な動きで迫（せま）ってきた。

　最初（さいしょ）に戦った相手よりも背が高く、がっしりしているように見える。

（だから、どうした）

　ジュンヤに恐（おそ）れはなかった。対策（たいさく）を練（ね）ったわけでもないのに、根拠（こんきょ）のない自信（じしん）があった。

『足に気（き）を付（つ）けて』

　ツバキの声に反応（はんのう）して、とっさに下がるソーグ。右脚（みぎあし）での下段蹴（げだんげ）りが空振（からぶ）りにおわった怪人（かいじん）めがけて、一歩踏（いっぽふ）み込（こ）む。左手を突（つ）き出（だ）した。

　当たったことを確認（かくにん）して、すぐに叫（さけ）ぶ。

『ファイナルアーツ！』

　右腕を使う。最初（さいしょ）から決めていた。上半身（じょうはんしん）を右にひねる。集まったエネルギーを一気にぶつけて、黒い怪人（かいじん）に衝撃（しょうげき）が走る。

　ギアロードパンチが炸裂（さくれつ）した。山肌（やまはだ）まで吹き飛んだ怪人（かいじん）が、ふぞろいに荒々（あらあら）しく積（つ）まれた石の向こうに見えなくなる。そして、ほこりっぽい採石場（さいせきじょう）で起こる爆発（ばくはつ）。

『やった！』

『あとは任（まか）せて、河川敷（かせんしき）を通って帰って。見つからないように変身（へんしん）を解（と）いてね』

　小走（こばし）りで走り去る、赤いヒーロー。

　姿が見えなくなることを待っていたかのように、黒い怪人（かいじん）がゆっくりと立ち上がった。

「なんだよ、これは」

「ジュン、最低（さいてい）」

　少女の声に、少年が眉（まゆ）をひそめる。

　ペジ・タイプピーのほかに姿（すがた）を見せたのは、未知（みち）の怪人（かいじん）。

「オレが、間違（まちが）ったんだ」

　ギアロードキックを放（はな）つソーグ。

　次回。

「間違（まちが）った力（ちから）」

　ギアロード・ソーグはフィクションです。実在の人物や団体名とは関係ありません。