粒子ドライバー・ソーグ

11話 拳。シグス改 Ｂパート

「使用開始（しようかいし）」

「ノウリョク、シヨウカノウ」

　同時（どうじ）に言って、ハーモニーを奏（かな）でた。二人だけではなく、ギアからの機械的（きかいてき）な音声（おんせい）も。

　光に包まれる、銀色（ぎんいろ）とオレンジ色（いろ）。装甲（そうこう）がパズルピースのように分割（ぶんかつ）されて、光が消えていく。

　廃工場（はいこうじょう）の外。広い敷地内（しきちない）で、シグス改（かい）とデトンプラスの戦いが始まった。

　銀色（ぎんいろ）が攻（せ）め、オレンジ色（いろ）が反撃（はんげき）する。

　シグスの力は、質量（しつりょう）を与（あた）える。相手の動きを鈍（にぶ）らせることのほか、自身の力を増（ま）すことができる。

　アキラが的確（てきかく）な状況判断（じょうきょうはんだん）で攻撃（こうげき）を繰（く）り返（かえ）す。

　ところが、銀色（ぎんいろ）の拳（こぶし）は決定打（けっていだ）を与（あた）えられない。

　デトンの力は、強い相互作用（そうごさよう）をしない。流（なが）れる水（みず）のような力。エネルギーを受（う）け止（と）めることができる。

　サブロウが寸前（すんぜん）のところで受け流す。致命傷（ちめいしょう）を受けない。

　オレンジ色（いろ）の男は、全力（ぜんりょく）で戦っていた。どうしても負けられない理由（りゆう）があった。それでも、銀色（ぎんいろ）の男を倒（たお）すための方法（ほうほう）が思いつかない。

　遠（とお）く離（はな）れた場所（ばしょ）。画面（がめん）に映（うつ）る映像（えいぞう）。

　灰色の部屋（へや）で見守（みまも）るフワが、思いを口にする。

「いけー！」

　じょじょに押（お）していく、シグス改（かい）。

「家族（かぞく）のために負けられない」

　サブロウがつぶやいた。

　アキラの耳に、言葉（ことば）が届（とど）く。

　銀色（ぎんいろ）のヒーローは慈悲（じひ）を見せない。オレンジ色（いろ）の相手の動きを鈍（にぶ）らせ、ガードしていない部分（ぶぶん）に拳（こぶし）を当てつづける。

　辺（あた）りは赤く色づき始めた。

「言ってもムダなことは分かってる。天秤（てんびん）にかけられる物じゃないことくらい」

　アキラは何も言わない。

　邪魔（じゃま）をするなら倒（たお）すのみ。言葉（ことば）ではなく、行動（こうどう）で示（しめ）すように。手を止めない。質量（しつりょう）を増（ま）した蹴（け）りで、赤に近い色に染（そ）まった相手を吹（ふ）き飛（と）ばした。

「僕（ぼく）は、自分のために戦ってる。最低（さいてい）だなあ」

　夕日（ゆうひ）に照（て）らされて、銀色（ぎんいろ）がすこし赤く見える。

　そして。

「ファイナルアーツ」

　銀色（ぎんいろ）の男性から無慈悲（むじひ）な声が響（ひび）いた。勝負（しょうぶ）を決めようとするアキラ。威圧感（いあつかん）を放（はな）つ相手を前にして、傷（きず）ついたサブロウがゆっくりと立ち上がった。