9話 真実。そして Bパート

過酷かこく環境かんきょうでの労働ろうどう。その補助ほじょ目的もくてきに、装具そうぐを作った」

 ソーグのベルトの原形げんけいを作った男性が、これまでのことをかたはじめた。

 灰色の部屋へやに、一人の声だけがひびく。

 災害時さいがいじ事件現場じけんげんばなどで使う予定よていだった、試作しさくギア。もともとは赤色。未完成みかんせい段階だんかいで、何者なにものかにうばわれてしまった。ペジ・タイプピーの外装がいそうデータとともに。

 うばった組織そしきはすぐに判明はんめいした。ギアロード・ソーグの設定せっていていたからだ。

 少年が予告よこくを思い出した。それは、ソーグが怪人かいじんと戦っている映像えいぞう

「じゃあ、ペジを怪人かいじんっていう設定せっていにしたのは」

「わたしたちエスツーを、悪者わるものにしたかったんでしょ」

 ジュンヤとフワがってはいった。少年がのどかわきをうったえて、少女が小型の冷蔵庫れいぞうこ指差ゆびさす。二人で向かった。取り出される、容器ようきに入った水。

 3つのコップを机の上に置いた。

 ひとくち水を飲んで、アキラがさらにつづける。

安全装置あんぜんそうちまえだった。悪用あくようすれば、大惨事だいさんじを引き起こしかねない」

 作業用さぎょうようとしての性能せいのうえた力。警察けいさつには鎮圧ちんあつ不可能ふかのうなほどの。

 大々的だいだいてき公表こうひょうするとパニックを引き起こすかもしれないため、こっそりと回収かいしゅうするつもりだったらしい。

 エネルギー伝達装置でんたつそうち複雑ふくざつぬすんだものがそう簡単かんたんには作れない、と予想よそうしていたと言う。

「でも、結構けっこうすぐに変身へんしんしてるぞ。オレ」

「その時点じてんで、試作しさくギアだけを取り戻しても意味いみがなかった。てき狡猾こうかつだ」

「おにいちゃんが言うんだから、相当そうとうゲスそう」

 いもうと苦笑にがわらいを返したあにが、装置そうち説明せつめいを始める。

ちょうひも理論りろんジェネレーターによる伝達でんたつ。エネルギー自体じたいは、地下ちか高熱源体こうねつげんたいを――」

「つまりぃ?」

 強い口調くちょうで、フワがせいした。

「見えないひもで力をおくっている」

「なるほどなあ。デトンとシグスが同じような姿すがたをしてるわけだぜ」

 ジュンヤが納得なっとくしたようだ。

「テンペンは、おもちゃに見せかけた変身へんしんベルトを売るつもりだ。子供たちを兵士へいしとして使うために」

 うばわれたときには、まだ試作段階しさくだんかいだった。ギアを改良かいりょうしなければ、子供しか使えない。量産りょうさんには膨大ぼうだいなデータが必要ひつよう

「子供にしか使えないって、お前、ひょっとして」

「テストしてたのは、わたし」

 フワの言葉ことばに、ジュンヤはショックを受けた。

最初さいしょにソーグになったのは、フワかよ!」

 少年の強い口調くちょうを、少女は気にしていない。さっさと次の話題わだいに切り替える。

「やっぱり、テンペンのトップが指示しじしてる?」

「違う」

 つぶやくジュンヤ。

 あの社長しゃちょう指示しじしていないはず。やわらかな表情ひょうじょう脳裏のうりによみがえった。データ収集しゅうしゅうに、ジュンヤには思い当たることがある。

「エイスケ。たしか苗字みょうじは、雷古院らいこいん


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