8話 怪人の正体 Cパート

 ジュンヤは、薄々感づいていた。

 怪人かいじんの正体が人間だということに。

(ギアロード・ソーグの設定だと、怪人かいじんは作られた存在だから。だから、オレは)

 目の前の黒い相手を見て、少年は震えた。

「知らなかったんだ! こんな。こんなこと!」

 すぐに、自分の発言を否定する。

(違う。オレは知ってた。でも、番組の設定を信じるフリをして、本当のことを見なかった)

 ペジの変身者へんしんしゃは複数いる。クセもそれぞれ違う。戦ったジュンヤには、分かっていた。

 目の前でアキラが変身へんしんして、ジュンヤの身体からだにはずっと力が入っている。

大人おとなしくしてくれ』

 ペジ・タイプジーから聞こえたのは、加工された声。そして、前に聞いたものと同じだった。

「なんで。なんでなんだよ! 答えろよ!」

 答えは返ってこない。少年は、背を向けて走った。全力疾走はすぐに止まる。黒い相手が追い越して、立ちふさがったのだ。

 ジュンヤが行動を急ぐ。銀色のベルトを腰につけ、スイッチを押した。

「ソーグ、ジュンビカンリョウ」

変身へんしん!」

 ポーズは取らなかった。辺りの植物が光に包まれ、少年の身体に巻き付いていく。二回り大きくなって光が消えた。成人男性のような姿の赤いソーグは、構えていない。決め台詞も言わなかった。

使用開始しようかいし

「ノウリョク、シヨウカノウ」

『仕方ない。ここで破壊はかいする』

 ペジ・タイプジーが構えた。

『やめてくれ。戦いたくないんだ』

 ヒーロー番組ではめったに言わないであろう、弱々しい言葉が発せられた。加工されて格好いい声になっているため、落差がひどい。

 黒い相手の繰り出す技を、赤い人物がひたすら耐える。

『ジュンヤくん? どうしたの? 戦って』

 中の人は、通信の声に答えない。ツバキの心配は届いていない。

『なんとか言えよ! アキラ!』

 言葉ではなく、黒い拳が返ってきた。特訓とっくんのおかげで防ぐことができる。時折胸ときおりむねの防具に当たっても、ソーグは全く攻撃しない。

千古せんこアキラ。やはり、そうか。データはそろった』

 エイスケが、いつものようによく分からない通信を入れた。ジュンヤにはどうでもよかった。

『シグスエフェクト』

 光が黒い人物を包んだ。灰色へと変わり、装甲も変化する。大きなパズルピースが並んでいるようになって、光が消えた。

『デトンシフト!』

 光が赤いソーグを包む。黄色になって、装甲は亀裂が入ったような見た目になった。腕には棒状の武装がある。

 シグスが警戒して、すぐに構える。

 デトンは技を繰り出さなかった。振り返って、全速力で走った。

 性能差により、シグスには追いつくことができない。それを、ジュンヤは知らなかった。河川敷かせんしきを、ひたすら東へと走った。

 シグスはすでに構えていない。色が変わる。東を見つめる黒色の人物が、変身へんしん解除かいじょした。

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