粒子ドライバー・ソーグ

10話 ギアは青と、白 Ｃパート

　サイドカーが止まった。

　ヘルメットを取って、コートを脱（ぬ）ぐ少年。暖（あたた）かそうな服装（ふくそう）が顔を出した。

　ヘルメットだけ取った男性は、手袋（てぶくろ）を外した。ロングコートの前を開ける。

　見つめるのは目的地（もくてきち）。テンペンが所有（しょゆう）する、いまは使われていない鉄（てつ）の建物（たてもの）。あたりには鉄（てつ）の匂（にお）いがただよう。

　ジュンヤとアキラが足を踏（ふ）み入（い）れる。廃工場（はいこうじょう）に照明（しょうめい）がついた。

　大型（おおがた）の装置（そうち）が壁際（かべぎわ）に散乱（さんらん）していて、部屋（へや）の中心部（ちゅうしんぶ）に人がいる。

「発信器（はっしんき）には気付（きづ）いていた。あえて、そのままにした」

　スーツ姿（すがた）の男性が、ちいさな装置（そうち）を取り出した。細い腕（うで）が振（ふ）られる。床（ゆか）に落（お）ちた発信器（はっしんき）は、踏（ふ）みつけられた。

　エイスケの不気味（ぶきみ）な態度（たいど）に、ジュンヤは口をつぐんでいる。入り口近くに立ったまま。

「二人に勝てると思っているのか」

　アキラの言葉（ことば）を鼻で笑うエイスケ。それが合図（あいず）だったかのように、壁際（かべぎわ）から誰（だれ）かが現（あらわ）れた。

　部屋（へや）の中ほどに歩いていく人物を見て、少年が声を上げる。

「おもちゃ屋のおにいさん！」

「おれの相手か。エイスケは任（まか）せた」

　突然（とつぜん）、エイスケが腕（うで）を震（ふる）わせた。怒（いか）りをあらわにして叫（さけ）ぶ。

「千古（せんこ）アキラ！　小僧（こぞう）のあとは、お前だ！　……おい。分かってるな？」

　隣（となり）に何かをつぶやいた。クセのある短（みじか）い髪（かみ）の男性は、あまり表情（ひょうじょう）を変（か）えない。

「テンペンには逆（さか）らいませんよ。僕（ぼく）たちは」

「なんで。サブロウさん。まさか。ん？　ああっ！　まずいよ！　アキラ」

　急（きゅう）に慌（あわ）て始（はじ）めた少年が、隣（となり）の男性に詰（つ）め寄（よ）る。

「どうした？」

「材料（ざいりょう）がない！　忘（わす）れてきたんじゃないか？　もう。ドジなところがあるんだから」

　フワの口調をすこし真似（まね）たジュンヤに、アキラが噴（ふ）き出（だ）す。

「ははっ。心配（しんぱい）するな。ひもで送るほかに、空気中（くうきちゅう）の元素（げんそ）も材料（ざいりょう）にできる」

「それじゃあ、番組（ばんぐみ）と同じみたいに――」

「忌々（いまいま）しい。そこに辿（たど）り着（つ）いていたか。お前も」

　ジュンヤの言葉（ことば）を遮（さえぎ）って、エイスケが言った。

　誰（だれ）が合図（あいず）をしたわけでもなく、四人がそれぞれのギアを取り出す。青（あお）・灰（はい）・白（しろ）・赤（あか）。腰（こし）に装着（そうちゃく）した。スイッチが押（お）される。

「ジュンビカンリョウ」

「変身（へんしん）！」

　ほぼ同時（どうじ）に声（こえ）が響（ひび）いた。それぞれの身体（からだ）が光に包まれる。

　ジュンヤだけが、二回り大きくなる。青色の鎧（よろい）をまとう成人男性（せいじんだんせい）のような姿（すがた）になった。目に見える、大きな視覚（しかく）センサーは灰色。明かりを反射（はんしゃ）して輝（かがや）いた。

　マスクで顔が見えない。その名は、粒子（りゅうし）ドライバー・トロン。

　アキラが、メタリックな灰色の装甲（そうこう）を身にまとう。生身（なまみ）が見えなくなり、粒子（りゅうし）ドライバー・シグス改（かい）へと変（か）わった。

「究極（きゅうきょく）のギアの力、思（おも）い知（し）れ」

　エイスケが白い姿になっていく。全身（ぜんしん）を甲冑（かっちゅう）で覆（おお）う、ギアロード・ゲミオン。

　サブロウは、橙色（だいだいいろ）になった。腕（うで）の装甲（そうこう）から棒状（ぼうじょう）の武器（ぶき）が伸（の）びる、ギアロード・デトンプラス。

　消える光。青（あお）と銀（ぎん）に対するは、白（しろ）と橙（だいだい）。

　粒子（りゅうし）ドライバーとギアロードたちが対峙（たいじ）するのを、ツバキが遠くから見ていた。