9話 真実。そして Cパート

 試作ギアは、本来の赤色に戻っていた。

 正確には、すでに試作ギアではない。集められたデータをもとに、改良ギアになっている。

「あと少しで、究極きゅうきょくのギアが完成する」

 研究室のような部屋で、スーツ姿の男性が笑みを浮かべた。細い腕が伸び、赤いスマートフォンに見える装置をつかむ。

やつよりも、俺の方が上だ」

 七三に分けられた髪を乱すエイスケ。苦虫を噛み潰したような顔になり、手に青筋が浮き出す。

「安全装置のないこいつでデータを取るのも、最後になる」

 もはや、悪用するつもりだったことを隠していない。あらかじめ安全装置がないことを知っていた。エイスケには、平和利用する気が最初からなかったのだ。

 部屋のドアが音を立てて開いた。姿を見せたツバキに、ねぎらいの言葉はかけられない。

 不気味な笑みを浮かべ、エイスケが宣言する。

「実験を始めるぞ」

 スーツ姿の女性のあとに、もう一つの影がついてきた。

 現れたのは、おもちゃ屋の店員。山田やまだサブロウだった。

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