粒子ドライバー・ソーグ

６話 力の謎 Ｃパート

　灰色の大男（おおおとこ）が繰（く）り出（だ）すパンチを、黄色の大男（おおおとこ）が受けた。

『ここだ！』

　デトンが、お返しの攻撃（こうげき）を構（かま）える。腕（うで）の防具（ぼうぐ）と一体化（いったいか）した、トンファー状（じょう）の武器（ぶき）による打撃（だげき）。シグスには届（とど）かない。当たる前で、急激（きゅうげき）に動（うご）きが鈍（にぶ）った。相手の攻撃（こうげき）を察知（さっち）して、黄色がいったん後（うし）ろに下がる。

『質量（しつりょう）の操作（そうさ）か。動きを制限（せいげん）するための、限定的（てんていてき）なものだが』

　デトンに変身（へんしん）している中の人には、通信（つうしん）の意味（いみ）が分からない。

『フェイントを入れないと、攻撃（こうげき）が当たらないってこと。気（き）を付（つ）けて！』

　ツバキからの通信（つうしん）で、ジュンヤはようやく把握（はあく）した。とはいえ、相手の技（わざ）を受けることしかできない。

　デトンシフトには制限時間（せいげんじかん）がある。相手の力を受け止め、自身（じしん）の力に上乗（うわの）せする能力（のうりょく）。

『浅（あさ）いっ』

　荒々（あらあら）しい流（なが）れがせき止められたように感じられ、全力（ぜんりょく）で蹴（け）りをぶつけることができない。

　焦（あせ）りを隠（かく）せないジュンヤ。灰色のパンチを受けた。

『え？』

　黄色が山肌（やまはだ）まで吹（ふ）き飛（と）ぶ。能力（のうりょく）の発動（はつどう）がわずかに遅（おく）れて、エネルギーを受け止めきれなかった。ぶつかる前に、今度（こんど）はきっちり対処（たいしょ）。ダメージを最小限（さいしょうげん）に抑（おさ）えた。

『自身（じしん）の力を増（ま）すことにも使うか。だが、それだけの力を行使（こうし）するには、制約（せいやく）が伴（ともな）う』

　よくわからない。けど、怖（こわ）いくらいの力だ。時間切（じかんぎ）れになる前に、なんとかしないと。

　ジュンヤは、相手にも制限時間（せいげんじかん）があるかもしれないという発想（はっそう）がなかった。灰色へと走っていく途中（とちゅう）で叫（さけ）ぶ。

『ファイナルアーツ！』

『ファイナルアーツ』

　続（つづ）いて、つぶやくような声。シグスも同じ言葉（ことば）を発（はっ）していることに、少年は気づいていない。

　黄色と灰色が光を放（はな）つ。

　ギアロードバッシュがうなり、スペースキックと激突（げきとつ）した。デトンが叫（さけ）ぶ。

『なんでだ！』

　黄色が力の反動（はんどう）を受ける。うしろに下がり、赤色へと戻った。

　灰色も力の反動（はんどう）を受けた。うしろに下がり、黒色へと戻る。

　おたがいに巻き上げた砂（すな）ぼこりが、風で横に流れていく。そして、問いに答えはなかった。

『なんで、ベルトを狙うんだ！』

　ペジ・タイプジーは何も言わない。黒い姿をした人型のものが、背（せ）を向けて遠ざかっていく。

（ダメだ。いま、追いかけても）

　赤い鎧（よろい）をまとった人物は、その場に立っていることしかできなかった。