10話 ギアは青と、白 Aパート

 答えは、もう決まっていた。

変身へんしんできなくても、できることをしたい。一緒に戦わせてくれ」

 ジュンヤの決意を聞いて、アキラが黙った。灰色の部屋で立ち尽くす三人。フワの髪が揺れる。少年を見てから、兄を見た。

「こうなるような気がした」

 こげ茶色のロングコートをまとった青年が、机の引き出しを開く。何かを取り出して閉めた。アキラは、右手に青いギアを持っている。

「なじみのある言葉で言うなら、トロンのベルト」

「まさか、ギアロードが敵になるなんて」

 状況を苦々しく思っている少年に、男性が助け舟を出す。

「名前なんて些細なことだ。粒子りゅうしをまとって乗りこなす、仮面の――」

粒子りゅうしドライバー!」

「そうだな。粒子りゅうしドライバー・トロン」

「えー? もうちょっと、こう。……ううん。なんでもない」

 二人の案を否定しなかった。少女は、困ったような顔で微笑んだ。

「これは、子供にしか使えない」

「てことは、フワが?」

「なんでよ。かわいくないから、イヤよ」

 少年と少女のやり取りを見て、アキラが白い歯を見せる。

「ペジとシグスの力が使える。現時点で、エスツー最高さいこうのギアだ」

「まさか、制限時間なし? 強すぎないか?」

 敵として戦ったことのあるジュンヤには、どれほど危険なものかがよく分かる。

「力に善も悪もない。どう使うかは、ジュンヤが決めろ」

 ソーグのベルトを手にしたときとは、顔つきが違う。凛々りりしい表情になった少年が、口を開く。

「わかった。オレ、戦う!」

 右手でトロンのベルトを受け取った。

「待てよ? 子供用にしなくても、アキラが使えばよかったんじゃ?」

「おれには、こいつがある」

 左手がコートのポケットに入れられる。灰色のギアを取り出した。

「シグスのベルトだ。シグスかいにも、制限時間はない」

「ネーミングセンスがちょっと、アレだよね。おにいちゃん」

 名前に不満がない少年は、別のことを考えていた。

思路川しろがわでそれ使っとけば、ソーグのベルトを取り戻せたんじゃないか?」

「黒幕が分からないと、意味がなかったからな。奥の手は隠しておくものだ」

「なるほどなあ」

「エイスケに、ギア改良の時間を与えてはいけない。行くぞ」

 さっさと出ていこうとするアキラを、ジュンヤが追いかける。

「行くって、どこへ?」

「発信器を付けてある」

 フワも二人を追っていく。かわいらしい服の袖をいじっている。もごもごと口を動かしてから、開いた。

「ジュンヤ」

「どうした?」

「おにいちゃんに頼らないでよ。調子に乗っちゃ、ダメだからね」

「うん。ありがとう。フワ」

 部屋の外に出て、見送る少女。目に映る二人の姿が小さくなっていった。


 隣の部屋で、三人が立ち話をしていた。

「よかったのか? 説教してやる、って言ってたろ、コウヘイ」

 背の高い、スーツ姿の男性が言った。名前はトモノリ。すれ違いざまに、ツバキに発信器をつけた人物。

「時間がない。仕方ない」

「誰を殴ったかなんて、知ってるのは俺たちだけでいいよ」

 コウヘイの言葉に、ソウマが同意した。

 背が低めの男が口角を上げる。大柄な男は、穏やかな表情。それは、アキラ以外の、ペジに変身へんしんした三人だった。

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