7話 答えを求めて Cパート

 どうにかして真実を知りたい。

 少年の思いが爆発した。

「オレ、変身へんしんできるんだぜ!」

 放課後の教室。ジュンヤの叫びを気にせずに、6のAの生徒たちが帰っていく。肩を落とす少年に、別の少年が話しかける。

「そんな冗談、言っちゃって。なんの影響?」

 ノゾムは信じていない。髪の長さは普通。優しくて、ギアロードのあとの番組のほうが好き。

 フワは、微妙な顔をしている。髪はショートボブ。小柄な少女。普段から、あまり愛想あいそがない。

「なんていうか。説明が難しいんだけどさ」

 ジュンヤがフワを見つめた。

 目をらされた。冷めた反応はいつものことなので、ジュンヤは気にしない。

(いつもなら、子供扱いするのに。どうした? フワコ)

 疑問を口にせず、少年が別のことを話す。

鉛筆えんぴつ、持ってないか? 大量に」

「ジュン? 転がして遊ぶ?」

 不思議そうに聞くことしかできないノゾムを、ジュンヤが見つめる。

「いやいや。ゾム。材料にして変身へんしんできるだろ」

「空気中の元素げんそを材料にするっていう設定だよ。ソーグは」

「そりゃ、番組ではそうだけどさ……」

「だから、なにが元ネタ?」

 ノゾムに返事をせずに、ジュンヤがフワのほうを向いた。しばらく何も話していないので、心配していた。

「フワコ。大丈夫か?」

「え? なに? 突然」

「なんか、元気ないんじゃないか? 家まで送っていこうか?」

 少年のほうを見ずに、少女が立ちあがった。

「いつもと同じでしょ。あと、フワコっていうの、やめてよ」

 フワが、急いで教室から出ていった。柔らかそうなほおに赤みが差していたので、ジュンヤは熱があるに違いないと思った。

「なんなんだ? あだ名で呼ばれるの、イヤか?」

「ぼくは別に。でも、これからは名前で呼ぼうよ」

「うーん。まあ、なんで呼んでるのかも分からないから、いいけどな」

 その日、怪人かいじんは現れなかった。

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