8話 怪人の正体 Dパート

 少年は、自宅へ向かっている。

 デトンの制限時間が過ぎたときに、誰も追ってきていないことを確認。家から遠くまで走ってしまったので、変身へんしんしたまま西へと戻った。家からほど近い距離まで移動してから身を隠し、変身へんしん解除かいじょしていた。

 昼下がりの街には、あまり人が多くない。和風の家の前に立つ女性は、目立つ存在だ。

 悲しそうな顔の少年に、優しい言葉はかけられなかった。

「なんで戦わなかったの?」

 スーツ姿のツバキは、冷たい表情をしていた。長い髪は、凍りついたように動かない。

怪人かいじんが人間だって、知らなかった」

 泣きそうなジュンヤの意見は聞かれない。

 エイスケが後ろから現れて、ジュンヤにつかみかかった。もみ合いになり、家の敷地内へ入る。細身の男性とはいえ、子供の力では抵抗できない。簡単にベルトを奪われた。

「返せ!」

 スーツ姿の男性が、にやりと笑う。突き飛ばされたジュンヤは、さらに蹴られた。ソーグのベルトに赤い筋が入っている。銀メッキの一部がはがれていた。

 こぶしを握りしめる少年。エイスケは冷めた目で見ている。

「知られたら終わりだろ。だからガキは嫌いなんだ」

 悠然ゆうぜんと歩くエイスケ。

 二人が去っていく。ツバキが振り返り、家のほうを見た。すぐ視線を前に戻す。そのとき、背の高いスーツ姿の男とすれ違った。

 ゆっくりと、少年が立ち上がる。

「ただいま」

 沈んだ声を出して、家に入るジュンヤ。

「父さん? 母さん?」

 そこに両親の姿はない。メモも何もない。さっき争ったときに家から誰も出てこなかったことがおかしいと、ようやく気づいた。

 状況が理解できない。何もかもが分からない。

 口に、強く力が入った。少年のほおを、涙が伝う。


「遊びにいこっ」

「これ以上話すには、覚悟がいる」

 ソーグが怪人かいじんと戦っている映像。

 フワに手を引かれるジュンヤ。

「安全装置のないこいつでデータを取るのも、最後になる」

 アキラがジュンヤに近づいた。身体からだに触れる。

 次回。

真実しんじつ。そして」

 ギアロード・ソーグはフィクションです。実在の人物や団体名とは関係ありません。

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