第37話 新しい世界

「やっぱり行くんですね」

「ええ。あとの苦労は、ヤマザキさんたちに押し付けちゃいます」

私は笑う。重い荷物を全てかなぐり捨て、身も心も軽やかだ。

「それじゃあ、いつかまた」

叶えられるかどうかわからない約束を、笑顔で敢えて交わす。

雲一つない青空の下、私は歩き出す。

た、た、た。雪に足先が僅かに沈む。

た、たた、たたた。足音は軽やか。次第に速度は増し、駆け足に。

左右の大きな翼をいっぱいに広げ、おおらかにひと羽ばたき。風切羽根が風を捉える。

目の前には冷たく白い峰がそびえる。足先に雪の感触はもうない。

見下ろすは広大な雪景色、遠くにはまた別の峰々が連なる。そこには何があるのだろう。そこには誰がいるのだろう。

捨ててきたものは、もう思い出せない。目の前には、新しい世界しかないのだから。

逢いに行きたい。いろんな…そう、フレンズに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

獣人伝奇 油絵オヤジ @aburaeoyaji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ