第16話 残骸

「衛星によれば、大型セルリアンは港で撃破されたと思われます。まずはそこを調査しましょう」

ナマケグマは地図を表示させ、ポイントした。

「さっきの鳥みたいに飛べりゃあいいんだけどな」

翼はそれほど羽ばたいているようではなかった。物理的な力で飛んでいるわけではない、というのは知識としてはあったが、実際に見てみると違和感はそれほどなかった。

「島内には車もありますが、目立つので徒歩でいきます」

「フレンズは車は使わない?」

「今のところ、そういった事例はないですね」

徒歩とはいえ、パワードスーツが勝手に歩いてくれる。バッテリーは3日は持つし、交換も容易いという。

日も上がり、勝手に歩いてくれるパワードスーツに乗っていると、なんだか眠気に誘われる。

時折食事休憩を挟みながら海沿いを進むと、草に覆われたかつての舗装された道路があった。やはり舗装道路は歩きやすい。一行は速度を上げた。

「船着き場ですかね、あれ」

スナドリネコは指差す。船着き場周囲の海面は群青で、喫水の深い大型船でも発着ができる深さがあるようだ。

「最初からこっちに上陸すればよかったのに」

「そんな目立つ真似できませんよ」

「もう手遅れだけどね」

周囲の警戒をするが、フレンズはいないようだ。とはいえ先ほどの例もある。センサーの類いは信用し過ぎるべきではない。

「あれ、何でしょう」

「火山岩のように見えますが」

それは真っ黒な、ゴツゴツした大きな岩だ。黒く輝いて見える。見渡せば、似たようなな岩がゴロゴロしている。

「高温から急激に冷やされたんでしょう。ほら見て、石英や長石を中心とした組成で、急に冷めたから天然ガラスになってるんです」

「お詳しいですな、先生」

「ただの助教ですよ、ハヤ…オオミミギツネさん」

「なあこれ、めんどくさくないか?」

「フレンズは言葉がわかるんですよ、注意するに越したことはない」

「…そんなことはわかってる」

オオミミギツネは仏頂面で呟いた。

「しかし不思議なんですよね。この諸島は火山噴火で生まれたっていうのに、ここキョウシュウエリアに火山はあのサンドスター火山だけ。普通の噴火はしない」

「でも、現実にこの島は存在するし、こうして火山岩もある」

「どう思う?先生」

「専門家じゃないから、なんとも。ただ」

「ただ?」

スナドリネコは、両手を広げてあたりを見渡した。

「火山にしては、局所的過ぎると思いませんか?」

そう言われて見てみれば、火山岩はわずか半径10mの範囲にしかなかった。

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