第34話 関連性
カコ博士はまる1日眠り続け、対策室は博士が目覚めるのを固唾を飲んで待つしかなかった。
「おはよう諸君、いい朝だな」
待ち疲れた対策室メンバーが机に突っ伏して寝ていたり、コーヒーをガブ飲みしている横で、カコ博士はすっきりとした顔で大きく挨拶した。
「なんだなんだ、死屍累々だな」
「誰のせいですか、誰の」
車椅子に座ったヤマザキが呆れたように答える。目の下にはクマが浮き、しんどそうだ。
「で、救われたとはどういうことです?」
「ああ、それか」
カコ博士はカップにコーヒーを注いだ。
「噴火はしないよ、もう止められたんだ」
「え?」
「恐らく、フレンズがやったのだろう。このかばん、というデータに何度か出てくるフレンズが指揮したようだな。とにかくフィルターは張り直され、噴火は止められた」
「え?我々が解析した時には噴火の兆候しかなかったですが」
「データだけ見ればな。だが考えてみろ、LB1は高次AIだぞ。表面的なデータはあくまで彼らが人間に見せるために副次的にまとめたものなんだよ」
「我々が見たのは、データの一部でしかない、と」
「そういうことだ。しかも彼らはサーバーをもたない独立したAIだ。その経験は近距離通信でしか伝わらない。それを踏まえてフィルタリングすれば良いのさ。それでも3日かかったが」
LB1が重大事と判断した場合、それは近隣のLB1に伝えられる。普段単独行動するLB1が、近距離通信するほどの重大事とすれば、それはかなり限定されるだろう。
「というわけで、経緯まではわからないが、既にフィルターは機能している。サンドスター火山の噴火は止められ、いずれオリンポス山も沈静化するだろう。それより」
ヤマザキはカコ博士の言葉を待った。
「アンチセルリウムの噴出だが、あれは人類のせいでもある」
「え?」
「ちょっと、これ見てくれ」
それは、見慣れた日時の羅列だ。サンドスター・ロウの噴出。だが、その右側には何件かの項目が追加されていた。
「これは?」
ヤマザキが聞いたことのない、おそらくは生物の名前と、動物園や研究施設の名前。
「これは、飼育下にあったり監視下にあった絶滅危惧種の、絶滅の瞬間だ」
サンドスター・ロウの噴出の方が、右側の項目よりはるかに多い。だが、時刻は完全に一致していた。
「これは…生物の絶滅が、アンチセルリウムの噴出を引き起こしているということですか」
「サンプルが少なすぎて、確定はできんがね。さて、実験だ。誰か、そのへんの絶滅危惧種をぶっ殺してみてくれ給え」
「冗談じゃない!」
研究者チームの生物専門家が叫ぶ。
「そういうことだ、実験などできない。一度失われた種は、二度と復活できない。サンドスターとセルリアンを使って、私が何度も試したからな」
カコ博士の顔は、苦悩に満ちた。
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