第20話 過去

「かばん、というフレンズが大型セルリアンを倒したってことですかね、さっきの話」

オオミミギツネ、ハヤマは携帯食糧を火にかけながら、ナマケグマに問いかける。

「さあどうでしょうか。ヒグマの話はかなりバイアスがかかっているようで、信憑性に欠けるというか」

「話だけ聞いたら、スーパーヒーローですもんね、かばん、てフレンズ」

スナドリネコ、ミコトはコーヒーを二人に渡す。

「本人に話をききたところだが、この島にはいないようだから、他のフレンズに聞こうかね」

「そ、それはダメですよオオミミギツネさん。フレンズとの接触は最小限にしなくては。ただでさえ既に見つかっているのに」

ヤマザキが慌てる。時すでに遅し、とはミコトも思うが、その前に聞いておきたいことがあった。

「LB1、見ませんね。諸島全体で1万体って言ってましたが」

「故障機の回収は、部隊のほうでやっていますが。データの整理分析も同時にしているはずですから、何かわかれば連絡があるでしょう」

「でも、一体も見ないってのは変じゃねえか。あいつら、フレンズが腹を空かせたら、じゃぱりまんを配るんだろ?俺たちもフレンズの格好をしてるんだから、来てもいいはずじゃねえか」

「ああ、LB1は、フレンズと人間の識別はタグで行なってますから。我々は今、隠密行動のスタッフタグを付けているので、干渉しないんです」

「他のフレンズの話を聞けないなら、LB1に聞いてみればいいじゃないですか?」

「LB1はフレンズとは会話しませんから、我々と話をしているのが見られたら不味いですよ」

確かに、ミコトたちはフレンズに既に見つかってはいるが、それは変なフレンズとしてだ。人間とはまだバレてはいない。多分。

「そもそも、なんで人間だとバレちゃいけないんですか。開園当時は人間とフレンズは仲良くやってたじゃないですか。今回の危機だって、協力を仰げばいいじゃないですか?」

「それはダメだ!」

ヤマザキが声を荒げた。

「それは…ダメでしょう、きっと。彼らはきっと、我々を許してはくれません」

ヤマザキは、うなだれて絞り出すように言った。

「…いったい、何があったんですか」

しばらく、沈黙があたりを包んだ。火の弾ける音だけがしじまに響く。

「これは他言無用に願います」

パワードスーツのマイクを切って、ヤマザキは重々しく話し始めた。

「あれは、私がまだ高校生だった頃です。開園したなジャパリパークに、友人と来たのは」

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