第26話 炎と、光と

ミコトは走る。パワードスーツの人工筋肉の走りには敵わないが、日頃フィールドワークで鍛えた脚だ。ぐんぐんとヤマザキのいた場所に近づく。

「はあっはあっ、ミコト、お前さんはセルリアンの標的になるかもしれねえだろ!俺が行くからお前さんは待ってろっ」

意外にも、ハヤマもミコトに遅れることなく走っている。

「いいえ、大丈夫だと思います!私を標的にするなら、さっき食べられてましたから!セルリアンが狙っていたのは、きっとエネルギーなんです!」

ミコトか叫び返す。ヤマザキが見えてきた。セルリアンは辺りを見渡しているように見える。

「エネルギー?どういうことだよ!」

「セルリアンは、爆弾の爆発だって吸収しちゃいますよね!セルリアンだって、活動するにはエネルギーが必要なんです!ただ、生き物と違って、ものを食べて代謝するんじゃなくて、エネルギーを直接吸収するんじゃないでしょうか!」

世界中で出現したセルリアンも、電気や熱を吸収している節はあった。当然、それで誘導したこともある。が、必ずしも成功するとは限らなかった。

「焚き火を食べようとして襲ってきたのか?じゃあなんでヤマザキが攻撃された!」

「話はあと、ヤマザキさんをパワードスーツから引っ張り出して!」

そう言うと、ミコトはヤマザキを通り過ぎ、収納から持ち出したのだろう、持っていた発煙筒を焚いた。

「来い、セルリアン!」

声に反応したかのように、セルリアンはミコトの方を向いた。

「気を付けろミコト!そいつは触手を伸ばすぞ!」

ハヤマがヤマザキを助け出しながら叫ぶ。ヤマザキの太腿は、鮮血に濡れていた。

セルリアンから勢いよく伸びた触手は、ミコトに向かって飛ぶ。パワードスーツの装甲を貫く硬度だ、当たればただでは済まない。

「ふっ」

ミコトは息を吐き出すと、思いっきり跳んだ。

セルリアンの触手を眼下に避け、そのまま振り返って見下ろすと、セルリアンは次の触手を伸ばすところだ。飛んできた3本の触手をひらりとかわし、ミコトはセルリアンの背後に降り立つ。

「うああああ!」

怒号とともに、ミコトは拳を握りしめ、セルリアンに叩きつける。

ばっきゅわん、そんな音と虹色の光に一瞬包まれたかと思うと、セルリアンは四散し、消滅した。

跡には何も残らなかった。

「はあっ、はあっ」

ミコトの息はまだ荒い。しかしその拳には、軽い痛みとともに、これまで感じたことのない充実感があった。

「ミコト、お前さんその姿は」

ヤマザキの止血を終えたハヤマが、ミコトを見て絶句する。

「鳥の、フレンズ?」

ああ、そうだ。ミコトは飛んだのだ。そこには暗闇の中なお真っ白に輝く、大きな翼があった。

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