ep3.秘密主義者の告白-06


 コトン、とシャーペンが手からノートの上に滑り落ちる。

 その拍子に芯が折れてしまったので何回かノックし、黒板を見るともう大分先まで授業は進んでいた。



(皮肉なもんだ……幼馴染で親友だって相手なのに、何も知らなんてな)



 怜七の死体はめった刺しにされて発見したと仁木は言っていた。

 そしてその翌日、ニュースでは「女子高生めった刺し事件」として取り扱われたらしく犯人はまだ捜索中だそうだ。


 「雨男」を知らないかい? と問われた。

 閑は少し間を置いてから、知りません。と答えた。

 そうか、この部活に入ってるくらいだからそういうのに明るいと思ってたけど……変な質問してゴメンね、と仁木は申し訳なさそうに苦笑していた。



 復讐するつもりなのだろうか?

 その相手を知った時、仁木はどういう行動に出るのだろうか?



(あんたの恋人を殺した犯人は、……あんたの親友ですよ)



 けして言ってはいけない。

 同情や心配からではなく、言ってはいけないルールなのだ。


 閑はシャーペンを筆箱にしまい、ノートを閉じた。

 それと同時にチャイムが鳴り、教師は「今日はここまで」とあっさり授業を終える。

 生徒は一斉に教科書とノートを閉じて次々と席を立ち、気付いた頃には教師も廊下へ出ていた。


 次の授業までの間に、生徒達はお喋りを楽しむ。先程まで静かだった教室は一気に賑やかになった。

 ふと窓の外を見ると、パラパラと雨が降り始めている。

 帰りまでに止むといいのだが、どうだろうか……。



(……俺には関係ないことだな)



 短くため息を吐いて、鞄の中の折り畳み傘を今一度確認した。


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