ep2.殺人主義者の友達-05


 帰宅して早々自分のベッドに直行しそのままうつ伏せに倒れる。

 そしてその体勢のまま五分経過すると閑はようやく寝返りを打った。



「何なんだよあの女……」



 下校途中に自分達と同じ制服と会わなくて本当に良かったと人心地つく。


 本を片手に器用について来る狩野窪はこちらが歩く速度を加速、減速、加速とどうやってもついて来て、しばらくして本を読みながら早く歩くと危ないのではないかと心配までし始めてしまって……。

 結局閑はゆっくり歩くことを選び、狩野窪を駅まで誘導した。

 そして彼女が改札をちゃんと通過するのを確認してから家に真っ直ぐ帰って来たのだ。

 散歩する気は失せてしまった。



(最悪だ……何でこうなったんだ。やっぱりあの夜外に出歩かなきゃこんなことにならなかったんだよなぁ……)



 夜に出歩き殺人鬼の犯行を目撃し、それが同じ学校の先輩であると判明して部活に無理矢理入れられ、その部活が原因で狩野窪に目をつけられた……。


 やはりあの失敗が大きすぎた。全てが連鎖反応となって押し寄せてきている。

 だが、今更それを悔いたところで現状は何も変えられない。



(しかも明日は水曜だろ…………あぁー仮病で休みてぇ……)



 だが母は仮病を許さない。残念なことに閑は体調を崩しにくい頑丈な体のせいで病欠というものをほとんどしたことがないのだ。

 こんなにも不真面目な生徒の模範例であるというのに、小・中学校共に皆勤賞を渡された。

 屈辱としか言いようがない。



(そうだ。家を出た後にそのままどっかに行っちまえばいいのか。サボるという手がある)



 中学生であった時は警察がそれを許さなかったが高校生となると別だろう。義務教育の枠から外れたのだ。

 家を出れば学校にきちんと行ったと思われ、そのままどこかへ逃亡すれば学校からは欠席扱い。高校生にもなって流石に家に電話等来ないだろう。



「よし、明日どこで時間潰すか決めねぇとな」



 なるべく金がかからず人目につかない場所……。市民図書館辺りがベストではないか?

 そう明日のサボタージュ計画に心躍らせながらスマートフォンで周辺地図の検索をかけようとしたところで、メッセージが一通届いた。



『夜の九時になったら学校の近くにある工事現場に来てね。あ、着替えも持ってきてくれるとうれしいな~』



 差出人は「雨男」。

 連絡先を教えた覚えはない。



「……」



 怒りや動揺ではない。純粋な恐怖のみを感じる。

 一気に血圧が下がった。

 何をするのかなんて聞きたくないし、そんなの知りたくも見たくもない。

 それでも、このメッセージに対する閑の拒否権はないのだ。


 メッセージだけもう一度読むと返信もせずにスマートフォンをベッドに放り、日が暮れるまで天井を眺めていた。

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