第32話 31

昨日は、ゴタゴタと色々あって疲れた

はずなのに、結局ほとんど眠れなかったミズキ。

週末で、休みだからもう少し寝てたいけどベッドの中でウダウダしてても、仕方ないので起きる事にした。


パジャマから着替えようとして気づく、いつもなら前日に用意しておく着替えを準備していない。

ミズキは、クローゼットから黒いタートルネックのセーターとデニムパンツを出して着替えた。


洗面所で髪をいつも通り結んで、洗顔を済ませた。

長谷川家では、リビングで朝食を食べると聞いたのでリビングへ向かう。


リビングに入ると、スウェットのルームウェアにボサボサの髪、眼鏡というスタイルの桃子が、パソコンと格闘していた。



「お早うございます。」

「あれ?ミズキちゃんもう、起きたの。休みだからもう少し寝ててもいいのに。まだ、6時すぎだよ。」


起きてきたミズキに、桃子は少し驚いた様子で言った。


「あんまり、眠れなかったから起きちゃおって思ったんです。桃子さんこそ早くないですか?」

「んー早いっていうか仕事の締め切り近くて

ね。3時くらいからここで仕事してるの。」

「お仕事って何のお仕事ですか?」

「小説家、木村ももってペンネームでね。主に少女向けライトノベル書いてるけどね。」

「そうだったんですか。」

ミズキは、顔がニヤけそうになるのをこらえる。


(うわっ、木村もも先生の作品全部持ってるし。僕、サイン欲しいけど。さすがに図々しいよな。)


「どうしたの?顔が変だよ?」

「何でも、ありません。」

ミズキは、あわてて誤魔化した。


「そう。悪いけど、真央ちゃん起こしてきてくれない?コンビニでね、パン買ってきてほしいな。二人で、買うの忘れてて。」

「はい、分かりました。」

ミズキは、返事をして真央の部屋に行く。


「起こされなきゃ、起きれないなんてだらしない。」

ボソリと言ってからノックする。返事がないので、ドアを開ける。


「おーい。起きろ!真央!朝だ」

遠慮なく大声で呼んでも、真央は微動だにしない。

「にゃん。にゃおん 」

ミズキの足元で白い猫が、何か教えるように鳴いている。

「えーと、そらだっけ?もしかして真央の起こしかたを教えてくれるの?」


(まさか猫が、そんな事するわけないか。)


ミズキが思った事とは反対に、そらは真央の

ベッドに、飛び乗るやいなや前足で掛け布団をバサアっとぶっ飛ばすと。

「にゃーん。にゃお!にゃやく、起きるにゃー(こらあ、真央!早く起きろ!)」


(今、しゃべらなかったか?そら)

ミズキは、そらがしゃべったような気がしたが、幻覚だと思う事にした。


「 そら普通に起こしてくれ。」

真央が、やっと起き出す。

「やっと起きたか、真央。猫に起こしてもらうなんて情けない奴だな。」

「ミズキ、お前案外毒舌なんだな。大人しそうなのに。」

ミズキは、うぐっと唸る。

「毒舌じゃないぞ!僕は、それより、さっさと、服を着替えろよ。桃子さんが、パン買ってきてほしいってさ。」

バシンっとドアが乱暴に閉められる。


(ありゃー怒ったな。)

パジャマから白いセーターと赤いチェックのミニスカートに着替えた。

真央は、急いで洗顔を済ませて桃子から預かった財布と携帯電話をいれた小さなトートバッグを持って外へ出る。


「悪い、待たせて。」

「いや、真央は、髪結んでないんだ。」

「ああ。寒いし面倒だしな。櫛をいれただけだな。」

真央が首をふると、少し癖のある髪がふわふわと揺れた。

「邪魔にならないの?」

「まあな、休みの日はおろしとくのもいいかと思ってさ。ご飯作る時は、結ぶけど。」

真央は、手首にしたシュシュを見せながら言う。

「ご飯作るの?きみが?」

「俺が、ご飯作るの変かよ。まあ、こんなだから驚くのは、無理ねーか。母さんが忙しい時とかは、俺が作るよ。ご飯作り以外の家事もだけど。」


(さっき、情けない奴だなって言っちゃったけど。結構しっかりしてるんだ。)

ミズキは、真央の一面を知って感心した。


コンビニに着くと、真央はパンを選びながら顔をしかめる。


「コンビニって値段高いよな。プライベートブランドのは、コンビニでも安いけど。」

「えっそうなの?全然気にしなかったな。」

ミズキが、本気で驚いてたので、真央は呆れた。


「なんだ、知らなかったのかよ。スーパーとかお使い行かねーのかよ。」

「行くけど、姉さんに指定された物しか買わないからちゃんと、チェックしたことなかったな。」

「そうか。悪かったな。つい俺の感覚で、言っちまったよ。ゴメン。」

素直に謝られて、ミズキは少し恥ずかしくなった。

「気にしてないから、大丈夫。」

「そっかよかった。やー馬鹿にしたって思われたらどうしよってさ。」

選んだパンを買って店を出ながら真央は、ミズキに話す。

(素直な子だな。僕もこのくらい素直になれたらいいけど。)

「どうかしたか?」

ミズキより背の低い真央が、心配そうにミズキを見上げていた。

「なんでも、ないよ。早く帰ろう桃子さん首を長くして待ってるよ。」

「あー今頃、真央ちゃんお腹すいたよ。って叫んでるな。」

二人は、家まで走って帰った。





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