第47話

そらが、天国へ行って数日。


真央は、やっとそらがいない事実を、受け入れはじめていた。




それと同時に、日常生活が、忙しくなりはじめた。




学校生活では、学年末試験が、近くなり勉強しなくてはいけないし、三年生を送る会の実行委員に、無理矢理させられるしで、てんやわんやだった。




気付けば、3月も半ば過ぎでもうすぐ、春休みだった。




久しぶりに、暇になったある日曜日。真央は、渉を誘ってある場所を訪れていた。




「ここって、もしかして」


「そう。私がって言うのもへんだけど、男子高校生だった、長谷川真央が死んだ場所だよ」




ずっと恐くて、来れなかったけど、今日、やっと来れた。




「ここから、始まったんだよ。今の私がね」


「うん」






真央は、じっと事故現場を見つめる。


確か、友人と遊んだ帰りだった。そらに、気をつけろとか言った気がする。


だけど、トラックにひかれて、気がついたらあの世へ行く寸前だった。




「もし、あの時、人生やり直しの権利を得てなくて、しかもそらが理不尽な事言ってなかったら、今の私は、ここにいない。渉とも会ってなかったね」


「そうだな。出会ったばかりの頃は、けんかばっかしてたよな。」


「馬鹿みたいな理由でね」




真央は、あの頃を思い出してクスクス笑った。


渉も笑いながら言う。




「猫のイラスト付きの絆創膏もらったときは、面食らったけどな」


「あの時は、あれしかなかったの」


「けど、あの絆創膏のお陰だよな。真央と話すきっかけ作った。あれが、普通のだったら俺の場合、サンキューでおしまいだもん」


「だろうね」




二人は、笑いあった。




「もうすぐ、二年生かあ」


「二年生になったらクラス替えあるよ。一緒のクラスになれたらいいけどね」


「そうだな、そしたら5月の修学旅行同じ班になれるかもしれないし。」


「修学旅行。今は、広島だっけ?」


「そう。前は、沖縄だったんだろ?兄貴言ってたぜ」


「沖縄だったよ。生前まえの姿だった時ね」


「まさかとは、思うけど、修学旅行実行委員会とか押し付けられてないよな?」


「……あたり。なんでわかったの?」


「今とそういうお人好しなところ、変わってなさそうだし」


「そうだよ。今も生前まえもお人好しだよ」




渉の指摘に真央は、悲しくなった。




「でも、今度は、押し付けられてやるんじゃなくて、自分から立候補しよかと」


「じゃ、その時は、俺も立候補しよっと」


「その前に、同じクラスにならないと駄目だけど」


「そうだな。」


「とりあえず、祈っとこう。同じクラスになれるように」


「うん」




二人の願いが叶って二年生も同じクラスだったのは、また、別の話。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る