第40話 37


「真央って、しゃべり方きついよね。」


ある日の昼休憩、女子数名と話していた時、何気に言われた一言。


「あーなんかね。同じ男言葉使っても、ミズキと全然違ってさ、ただ口の悪い男子って感じだよね。」

「言い過ぎじゃないかな。それは、僕も一緒だし。この前、父さんから注意されたんだよ。僕って言うのと、言葉使い直しなさいってね。ねぇ、真央。携帯で怒鳴ってたろ?僕聞いてる?」


「ああ、うん。凄かったな。僕だってわかってるよーって。」

ボーッとしてた真央は、あわてて返事する。

「まあ、言葉使いは、少しずつ直して、いけばいいと思うよ。私はね。」

ミズキは、真央を慰めるように言った。



「昼間の事、まだ気にしてるの?」

夕方、リビングで宿題をしながらミズキは、訊いてきた。

「まあ、そうなんだよ。俺じゃない、私ってそんなに言葉使い悪かったのかなって。」

「ぼっ私は、あんまり思った事ないけど。

大体、女言葉使っていても、しゃべり方一つで、きつく感じるから。」

「……さっき僕って言いかけたよね。」

「う〜やっぱりすぐは、ムリだな。 」


頭を抱えるミズキ。

「昼間も言ったけど、少しずつ直して、いけばいいもん。」

「だよな。」


夕食とお風呂を済ませた後、真央は、部屋のスタンドミラーの前に、立つと。


「私は、長谷川真央でーす。」

思い切り、普通ならドン低ような声で、ブリブリしながら、自分の名前を言ってみる。


「きんもい。無理だっつーの。俺が女言葉使うのって。」

「いきなり、何かと思うじゃない。女言葉使った上に、ブリブリしながら自分の名前いうなんて。」

「いやー昼間さ、クラスの奴に言われたんだよ。言葉使いがきついってさ。」

「な〜んだ。そんな事か。」

「なんだとは、なんだよ。そら」

真央は、そらに八つ当たりするように言った。


「だってえ、昔の私のがきついかったもの。しゃべり方。今も、お世辞にもいいとは、言えないけど、昔は、もっと凄かったわよ。てめー何言ってやがる。みたいね。」


「そうだっけ?そら、ヤンキーみたいにしゃべってたっけ。」

「そうよ。中学入る前から中2くらいまで。ヤンキーに憧れてね。」

「言われて、みたらそうだったような。」


真央は、生前(まえ)の事を思いだしながら言った。

「その。言葉使い、いつ直したんだよ?」

「うーん。まあ、覚えてないな。真央みたいに、友達に言われて直しはじめたけど、なんか、気づいたら今の言葉使いになってた。結局、一緒に、いる友達のしゃべり方がうつったみたいでね。」

「そうなんだ。」


真央は、目から、鱗が落ちるってこの事なんだなと思った。


「最初は、意識してれば、いいわよ。その内自然に、しゃべり方変わるから」

「そうだね。」


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