第31話 30

真央は、ミズキと高橋くんを連れて家に入るとリビングから怒鳴り声が聞こえてきた。


「何事 ?!」

真央は、あわててリビングのドアを開ける。


「ったく、どうゆうつもりよ。学校に行ったらミズキの転校手続きが完了してるって!しかも先月に勝手に済ませたですってぇ ふざけんじゃねーわよ。くそ親父!」

黒髪ロングヘアで、パンツスーツ姿の女性が、40代と思われるスーツ姿の男性に怒鳴っていた。


「姉さん、ここは他所の家だから」

「先生、落ち着いてください」

ミズキと高橋くんに宥められて女性は、落ち着きを取り戻す。


「茜ちゃん。落ち着いた?」

「ええまあ」

茜と呼ばれた女性はストンと座ると、用意されていたお茶をグーと飲んで一息つく。

「なあ、母さん一体どういう事なんだよ。家に帰ったらポツンとこの子立ってるし。何がなんだか。」

今までのやり取りを見て何がなんだかさっぱりな真央は、桃子に説明を求めた。


「えっと、私もどう説明したらいいのかわかんない」

桃子も困り果てた顔で言う。

「あたしから、説明します」

「そうして茜ちゃん」

茜は、ため息をつくと説明を始めた。

「まずは、あたし達の名前言わなきゃ。あたしは、佐藤茜さとうあかねで、この子が妹のミズキ。そこのバカなおっさんが、父の道春です。ちなみに、うちのくそ親父が桃子さんといとこ同士なの」

「茜。くそ親父は、酷くない?」

「お黙り。くそ親父!あんたが、いらない事するから、ややこしい事になってるんでしょ」

茜は、父道春を黙らせると説明を続ける。


「あのね、話すと長くなるけど、うちの父が来月から転勤で北海道へ行くのよ。それだけなら、別にいいけど。あたしの結婚が決まっててね。でもね、婚約者の海外赴任が決まったのよ。急遽あたしも行く事になってさ。そしたら、この子一人になるからって言ってたら桃子さんが、うちで預かってあげるって言ってくれたから、来月初めからこっちの中学通うようにって事でミズキとも話してたのに、このくそ親父ときたら来週から通うようにしてやがんのよ。信じられないわ」

茜は、説明を終えると道春をギロリと睨んだ。

「だって、高橋くんが急にお父さん転勤になってこっちの親戚の家に引っ越すって話聞いてさ。ミズキと離れたら可哀想かなって思ったんだもん」

道春は、プーと頬を膨らませて言い訳する。

「だからって、一ヶ月我慢したら会えるんだから別に、そこまでしなくてもいいでしょ」

茜は、父の発言にツッコミをいれた。

「まあ、もう転校手続き済んでるんだよね。だったら、いいよ。僕今日からここで、お世話になるんでしょ」

ミズキは、特に怒った様子もなく淡々とそう言った。

茜は、何か言いたげにしてたがそれ以上何も言わずにいた。


「じゃあ、桃子さん真央ちゃん。ミズキの事よろしくお願いします」

夕方、ミズキの荷物を整理すると茜は、二人に挨拶して道春を引っ張り連れて帰った。

真央は、ミズキの部屋のドアをノックする。

「どうぞ」

返事するミズキの声がどこかしょんぼりしていた。

「入るぞ」

真央は、ミズキの部屋に入ると話をはじめる。

「なあ、なんて呼んだらいいんだよ。お前の事。」

「普通に呼びすてでいい。」

「そっか。ミズキ大変だな。色々と。

ぶっ飛んだ親だと。」

「まあ、確かに色々へんたじゃなくて、変人だからね。」

「言っとくけど、うちの母さんも変人だからな気を付てな。」

「うん。なんだか分からないけど。これからよろしくね。真央と呼びすてにしても、平気?」

「ああ、大丈夫だせ。こっちこそ、よろしくな」

二人は、握手をかわした。





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