概要
第1話「パンダ・パンチ」
とある真夏の昼下がり、上野駅公園口近くの野外カフェでコーヒーを飲んでいた私が目撃したのは、二十歳を過ぎたばかりの一人娘が私と同じ年ぐらいの中年男と手を繋いで上野動物園に向かう姿だった。不倫にしろ、単なる年の差カップルにしろ、父としてこれを見過ごすことは出来ない。理由あって二人の前に出られない私は、こっそりと尾行を開始する。
第2話「となりのアライグマ」
僕の友達、山崎優羽は変なやつだ。いつでもどこでも手を洗わずにはいられない。学校行事中でもおかまいなしにいきなりいなくなり、どこかの洗面台で一生懸命に手を洗っている。そんな優羽を呼び戻すのは「山崎係」である僕の仕事。遠足で訪れた上野動
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!読んでて涙腺がゆるむシーン多数
タイトルが『曇り空のzoo』であるように、どれもちょっと悲しく苦しい話。未来は晴れるのかもしれないけど今は曇っている。私もぶっ刺さる話がありました……親子関係・人間関係に悩む人々の描写がリアル。
映像が脳内に浮かぶ、空気感が伝わってくる。見事な表現力。登場人物たちの表情が目に見えるよう。
そして、なんというか、作者の優しい視点に心が癒される。これは作者である「浅原ナオト」さまの作風なんでしょうか、他の作品を読んでも感じました。登場人物に対してものすごく優しい。苦しむ子供にも悩む大人に対しても、応援する気持ちが感じられる。
短編集なので読みやすいのもグッド。文芸小説としてものすごく完成度…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しい語り口、でも心を抉る!何回も読み返したくなる短編の傑作
作者である浅原ナオト氏の、人間というものに対する愛情に打たれる、そういう作品集となりました。私にとっての、個人的な読了後の感想です。日々、生活や仕事、様々なトラブル、そういったものに追われて私たちは生きている訳ですが、一体どうするとこの表現の主題、というかイメージが生まれてくるのか?「カノホモ」読了後も同じことを考えましたが、謎は深まる一方のようです。ナオト氏って、教師なのかなあ?或いは聖職者かも知れない?そんなことをちょっと考えたりしました。
多くのレビュワーの方が述べられていますが、「となりのあらいぐま」非常に良かったです。「カノホモ」の終わりの方を読んでいる時、思わず半泣きになったもの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!都会が苦手な父がOKしてくれたら、一緒に上野動物園に行きたいと思った
「家族」がテーマのオムニバス短編集、と銘打たれてはいるが、
その実、著者が最も追求したいテーマは「父親」なのではないか。
「父親」は曇天的な存在として描かれているように、私は感じた。
著者によるこの短編集への評価が高くないことは知っている。
取材ができず、話の骨格が曖昧なまま執筆したため、らしい。
とはいえ、「読むに値しない」ほどの低水準では決してない。
著者の筆力の高さは周知の通りで、本作も非常に端正である。
著者の作品群の特徴は「テーマ性の強さ」であるように思う。
例えば長編作品なら、ざっくり大雑把なまとめ方をしてしまうと、
『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』は「思春期の恋…続きを読む - ★★★ Excellent!!!短編集ならこれを読め
思わず命令形で書いてしまいましたが、本当にたくさんの人に読んでもらいたい、ハイクオリティな短編集です。
『曇り空のZOO』というタイトルの通り、心の中が曇っている人たちにまつわる5つのお話。全て動物園が舞台となっています。
登場人物は、何かしら悩みや不安を抱えています。そのどれもが、簡単には解決しないものばかり。
それでも、曇り空がいつか晴れるように、心の中もいつか晴れることを信じて、彼ら、彼女らは強く生きるのです。
全体的に、ずっと読んでいたくなるような、整った文章でした。
登場人物の心情が過不足なく表現されていて、自分が経験したことのないような場面でも、その想いや葛藤、感情が伝…続きを読む