優しい語り口、でも心を抉る!何回も読み返したくなる短編の傑作

作者である浅原ナオト氏の、人間というものに対する愛情に打たれる、そういう作品集となりました。私にとっての、個人的な読了後の感想です。日々、生活や仕事、様々なトラブル、そういったものに追われて私たちは生きている訳ですが、一体どうするとこの表現の主題、というかイメージが生まれてくるのか?「カノホモ」読了後も同じことを考えましたが、謎は深まる一方のようです。ナオト氏って、教師なのかなあ?或いは聖職者かも知れない?そんなことをちょっと考えたりしました。
多くのレビュワーの方が述べられていますが、「となりのあらいぐま」非常に良かったです。「カノホモ」の終わりの方を読んでいる時、思わず半泣きになったものですが、「となりのあらいぐま」の時は、オッサン一人、人知れずメソメソ泣いてしまったことを告白します。もっと正確に言うと、泣きたくなる、それもかなり強く泣きたくなる、そういう作品です。すごい。
「にんげんっていいな」については、最初の一文から心を抉られて苦しいくらいでした。個人的な話ですが一人っ子の娘に知的障害があり、冒頭の一文を読んだ時は、衝撃で胸を掴みました。(いや、悪い意味では全然ないです、これはホントです。冒頭がこの一文でなければ、多分こんなに強くは引き込まれていないです。作家のハシクレとして言います、優れた表現です)
そういうふうに自分のことを思うことが、うちの子にもあるんだろうな、と、これまで考えても見なかった、だけど考えて見れば当たり前のことに、今更ながら気付いたのです。なので、この物語は私にとって、単なる創作物:フィクションであることを越え、うちの子の、冒険の物語となりました。
「りこんしたら、ぼくは、おかあさんといっしょがいいです」
泣きました。しかし、おとうさん、じゃないのは人物設定上やむを得ないですが……。
最後に、「獅子の仔、仔獅子」での、怜央くんが「温かいスープでも飲んでいるかのように、ちびちびとオレンジジュースを飲む」シーン、可愛かったです、笑いました。


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