遠き道の果て、過酷な旅の途中に見た「原風景」

横浜の大黒ふ頭から山下町方面に向けて、首都高の下、ベイブリッジの一般道を走っていると、右側にみなとみらいの近未来的な高層建築物の街並みが見えて、左側には京浜工業地帯が何処までも果てしなく広がっている光景を目にします。日本とは本当はどういう国なのか?我々の生きる社会の本質とは一体どういうものなのか?その光景は極めて暗示的に、見る者すべての心に、壮大なスケールで問い掛けてきます。

作中に象徴的に登場する「キリン」の空に向かって立ちはだかる光景に、私はそういう巨大なものに対する暗示めいた何かを感じます。その国際貿易のための巨大な装置は、支配者としてすべての個人の上に君臨している、と。

主人公は、極めて過酷な旅路を歩んでいます。自己実現に向けて、そして生活に追われて、疲れ果てています。そして、まるで世界の果てのような、工業地帯に隣接する港湾エリアの真ん中で、彼は、その非人間的な世界のありようとは正反対の、「その」光景を目にするのです。

空の青色と、「キリン」と咲き誇る花の黄色が、眼に痛いほどのコントラストで、サイケデリックに描かれて、読者の胸に迫ってきます。

すみません、なんだかまとまりの無い文章になってしまいました。レビュー、というよりは、応援メッセージですね。

私はこの作品から、この作品の筆者がどれほどの道のりを歩いてきたか、そしてそれがどれほど過酷なものであったのかを思い、途方に暮れる思いです。そして今この瞬間も、寄る辺ない茫漠たる光景の中を、無言で、前をにらみ、息を切らせてながら歩いているのだと感じます。