★★★ Excellent!!!
かっこよくて可愛い戦う女の子のアジアンヒロイックファンタジー! 日崎アユム
アジア好き必読の作品。
中華風、中でも西方のシルクロードを思わせる地域を舞台としたヒロイックファンタジーです。
主人公の琥琅は人虎と呼ばれる娘。ひとでありながらひとでない、獣のように野性的で粗野な女性です。彼女は死んだ養母の親族と暮らしているのですが、ある時その家の養い子である青年・雷禅が商談の旅に出るというので、護衛としてついていくことにしました。その旅先で琥琅と雷禅は事件に巻き込まれていきます。
ひとつひとつの事件が中盤で多数派の民族である清民族と少数派の民族である吐蘇族の争いに集約されていきます。理不尽に虐げられた吐蘇族の怨嗟の声が大きな亀裂になっていく。吐蘇族自体はけして悪ではないんです。でも、憎むことをやめることができない。新たな悲劇、惨劇を呼びます。琥琅と雷禅はその渦に翻弄されます。
さまざまな民族、さまざまな役職のひとびとの生きざま、混じり合う文化……練り込まれた世界観に魅了されました。
でもけして難しいお話ではありません。お見事としか言い様のない読みやすい文章でひとつひとつの物事が丁寧に描写されているので、「これ何だっけ?」ということは発生しません。
琥琅がとにかく魅力的です。
山奥で人間を敵視して育った彼女は、未分化の感情、動物的な考え方をしますが、その単純な価値観・世界観がかっこいい。
本能のままに戦う。敵には容赦しない。強いです。この作…
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