第35話 良い人と下手くそ
坂下公園は俺の家の近くにあって、弘樹の家からは少し遠い。
そう、彼は良い人なのだ。
「お、遅くなってごめん…!」
走って上がった息が真っ白で。
既に来ていた弘樹は、きっと寒かっただろう。
ブランコに腰掛けている彼の元に駆け寄って、髪をぺたぺたと触る。
うん…やっぱり冷たい。ごめん。
「寒い」
「うん、ごめん…」
「早く帰りてぇ」
「う、うん?」
ならどうして呼び出したの弘樹君。
「だからさっさと答えろよ」
「う、うん」
隣のブランコをポンポンと叩かれ、俺もそこに腰掛ける。
おう…冷たい。
「希一、転校すんの?」
「う、うん」
「何で言ってくれんかったと?」
「…うっかりしとってから…」
「………」
「………」
む、無言が辛い…。
「俺、確かに高校では希一と絡まんかったやん」
「う、うん」
「でも、昔からの友だちやん」
「うん…」
「…言ってくれても良かったと思う」
「…ごめん」
俺は、どうも人との付き合いが下手らしい。
別れの時、何処までの人に報告すればいいのか解らなかった。
でも、弘樹には言うべきだったんだ。
そうか。
「…新しい学校でも友だち作れよ」
「うん」
「…たまに遊ぼ」
「それは、勿論…!」
「…おう。そんでさ」
「うん?」
「好きな人のことは…」
すっと下をなぞる弘樹の目線。
しんどかった失恋。
でも、俺はへらりと笑って口を開く。
「―――――――――」
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