第22話 男同士の恋バナは





「お、とうとさん…?」


「うん」


「そっか……」



寺ちゃんに、まさかの男性との関係が。

くるくるとシャープペンを回して、何とか気持ちを落ち着かせる。


が、無理だ。



待って待って待って。

俺ら、ただテスト勉強しとっただけよな?


何でこんなディープな話ばしよっと?


あれ?あれ?



「やっぱりこういう話は嫌だった?」


「えっ」


「兄弟だし」


「そ、そんな事ない!」



悲しそうに笑う寺ちゃんに、俺は慌てて否定する。


だって、俺だって他人のこと言えない。

先生に恋しているなんて、とてもじゃないけど褒められたもんじゃない。



「…話してくれてありがとう」


「……っ」



ちらりと見上げながら、寺ちゃんに告げる。

すると、彼の目が少し開かれた。


ちゃんと伝わっただろうか?

驚いたけど、決して不快には思っていない。



あまり他人には言えない話をしてくれて、嬉しかった。

俺の恋を笑わなかった寺ちゃんの恋を、大事に応援していきたい。



「俺、先生が好き。でも、先生は俺を好きじゃなかよ」


「…そうですか?」


「ん。先生はノーマルばい」


「………解りました」



嘘だー。絶対納得してない。

少し突き出た唇と、こてんと横に倒された首。


それらが彼の内心を物語っていた。



「ねえ寺ちゃん。弟さん、可愛かと?格好いいと?」



ふふ、と笑って寺ちゃんに思い切って聞いてみる。

やっぱさ、どうせならさ、恋バナとかしたい訳で。


その途端、寺ちゃんの目がパッと輝いた。



「可愛い!!めちゃくちゃ可愛い!!」



なんと、今まで接してきた中で一番のハイテンション!


弟さんへの愛が溢れとりますな!



結局この日は下校時間まで、寺ちゃんの弟さんへのラブ話を聞いて終わったのだった。





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