第21話 僕も同じ




「ねえ…俺、そんな感じしとった?」


「そんな感じ?」


「…先生ば好きそうな感じ」


「…うん」



申し訳なさそうに言う寺ちゃんに、羞恥が芽生える。

好きそうな感じ!

好きそうな感じだってさ!


何だかもう、今すぐ叫び出したい気分だ。



「…そんなに俺って、分かりやすかとかな…」


「あ、やっぱり当たっていましたか」


「ん。…寺ちゃん何で分かったと?何時から?」



もうこうなれば、開き直るしかない。

モヤモヤしたくないし、全部聞こう。


幸いにも、寺ちゃんから負の感情は感じられない。

気持ち悪いとか思っていないようで、ほっと安心した。


疑ってごめん、寺ちゃん。

君はとても誠実なお方だ…。



幾つも質問を飛ばす俺に、寺ちゃんは目をパチパチとさせた。



「分かったのは、僕にとって同性愛が普通だからですかね…。疑問を持ち出したのは、最近ですよ」



律儀に答えてくれる寺ちゃん。

そうか、最近か。

良かった…と安心したところで、一つ引っかかるところがあった。



「同性愛が普通かと…?」


「そうです」


「な、何で?」



ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐ると尋ねる。

彼は目を伏せると、小さく呟いた。






「僕、弟と付き合っているんです」






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