第14話 嫉妬だけは一丁前






先生が、中学生と仲が良い。


…しかも、女子。



ここは中高一貫校だから、美術部は中学生と高校生が、混ざって活動している。

そして先日、藤先生はヘルプとして、中学生の美術の授業を教えに行ったらしい。

(中学校の美術教師が、入院してしまったと聞いた。)


…大体の想像は、つくだろうか。



中学生達は、あっという間に、先生に懐いてしまったのだ。



部員は勿論の事、帰宅部の中学生まで。

彼女達は集団で美術部に来ては、先生と沢山話している。


たった一日で、この人気。

何なん、これ。

想像以上やわ…。



そして、俺の近くの女子達も、小声で先生の事を話している。



「藤先生って、よく見れば格好良かよね」



よく見らんでも、藤先生は格好良かし。



「あー。何か、好きになりそう!」






俺は、もうとっくに好きになっている。






一人で、勝手にモヤモヤしていた。


臆病者の俺は、彼女達の様に声に出して先生を褒める事なんて、出来やしない。


それなのに、嫉妬だけは一丁前。



とても、とても醜い。



「崎本君、絵の具足りる?」



準備室から顔を出して、そう尋ねてくれる先生。



「…あ、はい。大丈夫です」



それなのに。

俺は目を逸らし、ぶっきらぼうに答える事しか、出来ない。


視界の端で、寺ちゃんが心配そうにこちらを見ているのが、見て取れた。





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