第8話 タチの悪かっさ馬鹿野郎







「…俺も、落ち着きます…」



震える声で同意すると、先生は少し目を見張った。


その後、口元を優しげに緩めて呟く。



「同じだな」



嬉しそうな言葉と共に、くしゃくしゃと撫でられる俺の頭。


ぽぽぽっと顔が火照るのが分かる。

俺はされるがまま硬直しては、じっと足先の床を見つめた。



この人は、不意な距離が結構近いと思う。


それは嬉しくもあり、大変困る事でもあった。



「さーて。描くか」


「…はい」



何とも思ってないような声で次へと切り替える彼が、少し憎らしいのだけれども、ほっとしたのも嘘じゃない。



あー・・・






そこそこの美形って、かなりタチが悪いと思う。





先生は、誰もが振り返る程の美形ではない。

でも、好意を向けられれば皆喜ぶだろう。


あれだ、クラスで一番のイケメンではないけれどもクラスで一番モテるタイプだ。


俺の中では、これが一番しっくりくる。



自分の見た目の良さを知り尽くしている最高級の美形達とは違い、先生は言ってしまえば無防備ってやつだ。


優しい言葉や笑顔を向けられて、相手が何も感じないとでも思っているんだろうな…。



自分の魅力にちっとも気づいていない所が、先生の魅力の一つだけど。


でも、でも。



あんたの仕草一つで顔が熱くなる奴がいることくらい、知っといてさね バーーカ!!





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