第7話 雨の日は







雨が降ると、青が染み込んで周り一帯がグレーがかり、その色に落ち着く。


その雫の落ちる音は、自分の耳に心地よかった。



雨の日に自分がいつもより元気になる事に気づいたのは、さほど昔ではない。



水溜りに一歩踏み込むと揺れて広がる波紋や、窓を伝う透明の道筋を、綺麗に感じて堪らなかった。


特に好きなのは、帰りの電車の窓を濡らす雨粒だ。

店の光や車のライトにキラキラと光るそれは、ずっと見ていられた。



けれども、それを他人と分かち合えたことはなくて。

先生が、初めてだ。


それも、また嬉しい。



「何で雨の日って、皆テンション下がるって言うんだろうな」



先生の声に、俺は顔を上げた。

彼は自分の隣の席をポンポンと叩き、俺に座るように指示をする。


荷物を席の通路側に置き、その隣に腰掛けると先生はまた口を開いた。






「『落ち着く』とは思わないのかね?」






それは、自分の頭の中と他人の言葉が、初めて重なった瞬間だった。






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