第27話 会いたくないけど





会いたくなくて、ずっと傍に居たい人。


藤先生の声に目を開けると、目の前に広がるのは、真っ白で。

見慣れない彼の服装に、恐る恐る顔を上げる。



あんなに気まずくなっていたのに、先生の姿を見た俺は、そんなこと等まるっきり頭から吹っ飛んでしまった。


口がぽかんと開くのが分かる。



「…せんせ、その格好…どしたんですか…」


「ん?変?」


「………」



目の前に現れたのは、白衣を着た先生。

俺は、今度は口だけではなく、目も開く事になった。


…どうしよう。





正直言って、めちゃくちゃ格好良い。





真っ白になっていく頭の中と、きっと紅く染まっているであろう頬。


二つの色が、ぐるぐるとじんわりと、広がっていくのが解ってしまう。



スラリとした先生の身体に羽織られた、白い布。

決して浮いていないそれは、先生の端整な顔立ちに、よく馴染んでいた。



「…な、なして急にそがん…」


「…ん?」


「…何で、急にそいば着ることにしたとですか…?」


「この間、絵の具でワイシャツを汚しちゃってさ。白衣でカバーしようと思って」



尋ねてみると、簡単な事。

先生は、あっけらかんとして答えてくれた。

物凄く単純な理由だけど…。


先生、白衣グッジョブです。





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