第34話 段ボール





部屋に入ると、並ぶのは段ボール箱ばかりで。


無機質な部屋に、何とも言えなくなる。



学校で使う物やら衣服以外は、全て押し込んでしまった。

それで部屋が狭くなったかと言うと、そうでもない。


段ボール箱が邪魔で、しょっちゅう躓くし転ぶ。



その度に、心配性の母親がのんびりとした声で「大丈夫〜?」と尋ねてくるのは、内緒だ。



不意にポケットの中で携帯が震えた。


一通のメッセージ。

はて、誰だろう?


俺はあまり人と連絡を取る奴じゃないけん、悲しいかな、あまり携帯の出番はない。


あ、やっぱり言っといて悲しくなってきた。

やばい。



[希一、転校するってマジなん?]



…メッセージの相手は弘樹だった。


あー・・・、そういえばちゃんと話しとらんかったなぁ…。



[うん。来年度から山口行って来る]



うーんうーんと悩みながら、短い文を打つ。

すると、秒で返信が来た。



[てめぇ表出ろ]



「えっ」



思わず声が出てしまった。

何か…怒っとる?


ちょっとびびってしまった俺は、返信を打つ手が止まる。

えーと。どうしよう。



すると今度は着信が。



「ぎょわ!!」



急に携帯が震えて変な声が出てしまった。

深く呼吸を吐くと、俺は恐る恐る電話に出る。



「もしも」『坂下公園』


「えっ?」


『今から坂下公園集合。んじゃ』


「え、あ、あの…」



…切れてる。


ぱったりと無音になった電話先。

通話が切れてしまったそれは、もう意味がない。


と、とにかく急いで行かなくては。



俺はまだ着替えていなかった学ランのまま、慌てて家を出た。





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