第11話 意外な討論





藤先生は、どんなイメージがするだろう。



最近寝る時に考えるのは、こればかりだ。

内緒の絵の軸となっている彼のこと。


好きな人を形にするなんて、よっぽど才能のある人か又は好意を持たれていない限り、それは相手にとって不快なものになるだろう。

だからこそ、内緒なのだ。



俺は知っている。

世の中では、好きでもない奴に愛を向けられると気持ち悪いと認識される事を。


そして、一般人の男性が彼女へのラブソングを作った時、かなりドン引きされる事もだ。



俺は彼らの予備軍、もしくはそれなのだから笑えない。



あ、駄目だ。

へこんできた。



今日もキャンバスに向かって絵の具を撒き散らしていた俺は、自分の思考回路でダメージを受けた。


なるほど。

これが阿呆ってやつか。



俺はくしゃくしゃに丸めたラップに絵の具を付け、ぺったぺったとキャンバスに色付けながら、ぼんやりとする。


先生は何となく夜空なイメージがあるから、それで細かい粒のようにしていく。



「いや、街のラーメンなら電停の目の前だろ」


「違います。アーケードの入口です」



すると聞こえてくるのは、藤先生と寺ちゃんの討論。


どうやら題材は、街の一番美味いラーメンについてのようだ。



「分かってないな」


「先生こそ…」


「崎本君、お前はどう思う」


「へ!?」



急に話題を振られてしまった。


二人の目線がこっちへとやって来る。



え。

あの討論に、俺は巻き込まれたの?





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