電話嫌いがコールセンターに行って極度の電話嫌いになった話。
某掲示板の名無し曰く、「発達障害がコールセンターとか死亡フラグじゃねーか」
知ってたさ、わかってたさ、それでも人間やらなきゃいけない時があるんだよ。
既卒未経験で派遣できる仕事がコールセンターしかないって現実に、立ち向かうしかなかったんだ……!!!
結論から言おう。
半年で辞めた。
それも最初の3ヶ月は研修期間だったので、実質3ヶ月しか働いていない。
しかし私はそれを英断だったと今も思っている。
だって、本当にひどかったから。
コールセンターでの仕事というと受信が多いイメージがあるかもしれないが、当時の私の仕事では発信のほうが多かった。
コール音が鳴るだけで端末を投げ割りたい程度には電話の受信が苦手な私は、発信が中心ならまだなんとかなるのではないかと考えた。
それに、仕事をしていく上で電話応対がない部署はまずないからな……
既卒未経験なのもあり、苦手を克服しようという若さがまだあったのである。
だがしかし。
ふたを開けてみれば、発信の半分か3分の2程度には受信も多かった。
社内から連絡が回る、離席者への取り次ぎも回る、電話に出なかった顧客からの折り返しもやってくる。
コール音が鳴り止むのは終業時……22時近い時刻のことだった(シフト制)。
当時の私は、発達障害の診断がおりた直後。
そのため自覚している特性はひどく少なかったし、社会性や想像力もびっくりするほど低かった。
何せ、まだ「他人=自律稼働するラジオ」認識の時代である。
上司にクレーム処理してもらった顧客が複数いる、という話だけでここは終えさせてほしい。
当時の問題点は以下になる。
1.耳からの言語情報を拾えない。特に電話越しではノイズがかかって聞き取りが難しい。さらに聞いた端からぼろぼろ記憶がこぼれる機能付き。
2.聞きながらメモができない。まず聞いた音を頭のなかで文字にしてからでないと書けないので、タイムラグができてしまう。また、書いている間は聞こえないし話せない。
3.相手の感情情報を拾えない。声を荒げるなどわかりやすく示されれば気づくのだが、抑制されているとわからない(そしてクレームへ)。
4.相手と会話ができない。声だけで向きあっている緊張感が苦痛すぎて、情報伝達だけで終わらせようとしてしまう。イレギュラーに対応できない(のに上司も驚きのイレギュラー案件引き率)。
5.これらのストレスによりちょいちょい会社に行けなくなる。ちょうど文章書きとしての自分に絶望していたのもあって、路面電車の線路に数秒立ってた程度には追い詰められていく。
さらにこれら全てを乗り越えた先にあるのは、どんなイレギュラーもさくさくこなすベテランやそれをまとめる直属上司さえ派遣社員であり、ぺーぺーの私と時給が100円程度しか違わない、という現実だった。
職場環境はとてもよかった。
研修は丁寧だし、上司は皆心強かったし、周囲は厳しくも優しかった。
大きな組織で働く基礎が身についたし、女性同士の雑談に慣れたし、毎日誰かしらの置いたおやつがあったし、理由の分からない飲み会では飲食無料だった。
でも、無理だった。
この仕事で、やっていける気がしなかった。
結果的に自分の特性(と書いて弱点と読む)がどんどこ自覚できて助かった面はある。
また、ボカロにはまったおかげで聞いたものの記憶維持がしやすくなったこともあり、たまに電話を取り次ぐ程度はなんとかこなせるようにはなった。
が、それは同時に、実家からの電話すら10コールまで出ない人間を、20コールたっても意地でも取らない人間にしてしまったのである。
軽減こそしているが、特性は今も存在するのだ。乗り越えようとすれば、それだけ精神疲労を負うはめになる。
いわば、魔法を使うのに他人の数割増しでMPが必要になるようなもの。
MPが足りないので電話には出られません!!! と叫びたい日々は今も続いている。
……しかし「電話は嫌いだメールで言え」と送ったら「電話に出ろ」と返してコールしてくるうちの親は正直どうかしていないか(出ないからだよ)。
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