この身に利点があるとするなら

 自慢じゃないが、私の職業能力はかなり高い。


 厚生労働省が作った能力測定テストでは、どの分野の仕事についてもまず大丈夫だという結果が出ている。

 発達障害の診断のために受けたWAIS-Ⅲでも、有意差こそあれ同世代の平均以上の値を出している。

 就労支援での評価でも、頑張りすぎるなと言われる程度には高い数値を出している。


 そう、能力だけは高いんだ……


 ! ただし不定期でグロッキー状態頻発

 ! ただし生活リズムは不安定でほっとくと寝食できなくなる

 ! ただし人のなかで疲労しやすく午後になると寝落ちる

 ! ただしスケジュール管理、タスク管理を自分だけで処理していけない

 ! ただし発想を具体的計画に落としこめない

 ! ただし細かいことに目がいく割に大局を読めない

 ! ただし顧客や職場相手の思考や感情が読めない


 エトセトラエトセトラ……(だから表現が古いっての)


 ようするに、「大まかな仕事を投げられつつ、やるべきことを安定して遂行し続ける能力」が著しく欠けている。


 前半もこのご時世では厳しいが、後半はほとんど致命傷だ。

 なんせ以前は毎年病欠で有休使いきってましたからね。しかも使いきってなお休んでましたしね。


 これは以前書いた時間感覚の鈍さもあるし、自律神経が不安定になりやすいのもある。

 発達障害の人間は、なぜだか不定愁訴を起こしやすい。理由はわからないが、体に対して感覚が鈍い事例をいくつか見るので、神経周りで何かあるのかもしれない。


 社会性の低さや、自他の境界のもろさも問題だ。

 仕事に集中したいときに限って、周りの音が事細かに拾われる。


 以前の職場では、嫌な話題がどんどん耳に入ってきて気持ち悪くなることもあった。

 また、別の職場では仕事のミスで叱られ、自分の情けなさにオフィスで泣き出してしまったこともあった。


 ストレスに過敏なのに、ストレスが重なっていることには気づきにくい。

 そこに自律神経の不安定さが押し寄せて、さらに季節などの外界の変化がストレスを与えてくる。

 結果、前日比でプラマイ3度気温が変わると、風邪や発熱を起こすことが私にはよくあった。


 会社というのは組織である。

 安定した人員が、毎日確実に与えられた仕事を遂行することで利潤を生み出し、全体で社会に貢献する。

 そこで求められるのは、何よりも「日々確実に仕事をこなせる人間」だ。


 そして、できる限り安定して仕事のできる人員であることは、雇われる側の責任となっている。

(これを拡大解釈するせいでマタハラやモラハラが起きている気がするが、ここでは置いておく)


 ゲームのキャラとして考えてみればいい。


 他より2割増の成果をあげられるが効果は安定せず、それ以上にステ異常を起こしやすく、また防御が紙で回復手段も効きにくいキャラクターと。


 毎回他の8割程度の成果をあげてくるが、効果が確実で回復が早く、攻撃やステ異常に強いキャラクターと。


 初期能力値が同じなら、どちらをあなたは使うだろうか?

 それも、あなたの資産と人生と人間関係を賭けて。



 これで一芸にでも秀でていればいいのだろうが、あいにく私が一番できるスキルは、こうした文章書きなのだ。


 作家、ブロガー、著作業、文筆業……


 体調とスケジュール管理とコミュニケーション能力が一番求められる仕事じゃないかーーー!!!


 正直な話、家政婦と秘書と弁護士がほしい。



 なおライターを試した時期もあるんだが、広告記事をひとつふたつ書いてみたところで不定愁訴がひどすぎて止めた(胃腸の痛みやめまいもさることながら、顔の青白さと暗さがヤバかった。人間やりたくないことや合わないことは本当に顔が死ぬ)。


 創作に関してはいくつかカクヨムに載せているのでそちらを参照してほしい。


 ちなみに一番言われたのは「発想は面白いのにね」である。はっはっは( ̄▽ ̄;)



 世界は広く、職は無限にある。


 障害によっていいことがあるとしたら、「絶対に自分に合うところでしか働けない」ことだ。


 他の人のように、合わない環境でも耐えられる能力は私にはない。



 ブラック企業で真っ先に倒れる。

 職種が合っていても環境が合わないと倒れる。

 我慢する、という前に体が根を上げる。

 めまいで倒れて救急車で運ばれて「原因不明」と言われる(言われた)。


 逆に言えば、私は自分にぴったりの仕事でしか生きられない。


 自分に合っていない仕事をいやいやこなす人が多い世の中で、それは幸運なことであるようにも思うのである。

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