合格発表
今日は大学の合格発表。緊張しているのが分かる。わたしも、隣にいる恵美ちゃんも。
やるべきことはやってきたはず。それでも、不安が押し寄せてくる。もっとやれることがあったんじゃないか、もしダメだったら…。
目の前にある大きな掲示板を見る。たくさんの数字が書かれている掲示板。握りしめた手の中には受験票。そんなものを見なくても受験番号は覚えてしまっている。でも、不安で、持ってきてしまっていた。
「あ、あった!」
恵美ちゃんが自分の番号を見つけたみたいだ。おめでとう、って言いたいけれど、今は自分のことで一杯でそんな余裕はない。
もし、わたしだけ落ちてたら?そしたら、恵美ちゃんと離れ離れになっちゃうの?そんなの、イヤだよ。
恵美ちゃんは頭もよくて、本当ならもう少し上の大学も目指せるはずだった。でも、わたしのやりたいことって、この大学くらいにしかないから。そんなことを言ってわたしの志望校のここを受験した。
本当の気持ちは分からない。でも、わたしは嬉しかった。ずっと一緒だった恵美ちゃんとこれからも一緒にいられるかも、そう思ったから。
でも、わたしは、恵美ちゃんほど頭もよくない。ここだって、受かるかどうかは微妙なところ。模試でもA判定なんて出たことは一度もない。しかも、運悪く、わたしの苦手なものばかり試験に出て、自信がない。
「大丈夫だよ。桜ならきっと受かってる。あんなに頑張ってたんだから」
わたしが緊張と不安で押し潰されそうになっていたら、励ましてくれた。
その一押しでわたしは勇気が出た。もう一度頭の中で受験番号を確認する。ゆっくりと顔を上げて、番号を探す。
「え?嘘。あった…。わたし、受かってるよ、恵美ちゃん!」
「うん、おめでとう」
「ありがとう。あ、恵美ちゃんもおめでとう」
「ありがとう」
わたしは思わず、恵美ちゃんに抱きついた。嬉しくて、嬉しくて。だって、自信なんて全然なかったんだから。
でも、これでまた…
「これでまた、一緒だね」
あ、わたしと同じこと、考えてくれてた。受かったことよりも、そのことが嬉しくて、涙が溢れてきた。
「うん、一緒、だね」
「泣くほど嬉しいの?わたしは桜ならきっと大丈夫だって最初から信じてたよ?」
「ありがとう」
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