吹奏楽
友達に誘われてわたしは吹奏楽部に入った。やったことはないけれど、気楽なものだと思っていた。
でも、実際は全然違っていた。音を出すために腹筋をつけなくてはいけないし、なぜか運動部ばりに体力をつけなくてはいけなかったり……。
正直、イヤになりそうになった。でも、そんなわたしがずっと続けているのには理由があった。それは、誘ってくれた友達の友香ちゃん。
わたしは友香ちゃんと一緒のトランペットを吹くことになったんだけど、わたしは友香ちゃんに手取り足取り教えてもらうことになった。それは、本当に文字通りの意味で。
友香ちゃんは後ろからわたしを抱き抱えるようにして、指を重ねて、教えてくれる。吹くときに友香ちゃんも一緒に息を吐くから、耳に当たって、変な気持ちになるときもあるけど……。
でも、友香ちゃんと密着していられる時間が嬉しくて、だから、わざとできない振りをして友香ちゃんと二人きりの個人レッスンをしてる。
こんなこと知られたら、友香ちゃんに嫌われちゃうかな?ううん、きっと笑って許してくれる。だって、友香ちゃんだもん。
でも、あんまりやりすぎはいけないよね?今日は真面目に頑張ろうかな……。
部活が終わって、友香ちゃんと一緒に電車で帰った。その途中、友香ちゃんが寂しそうに話しかけてきた。
「トランペット、うまく吹けるようになってきちゃったね……」
「うん。友香ちゃんのお陰だよ」
わたしが答えると、友香ちゃんは表情を曇らせてしまった。
何で?どうして?頭の中で?がいくつも浮かぶ。
「私との個人レッスンももう終わり、かな?」
「わたしはまだまだだから、友香ちゃんにもっと教えてほしいな」
「でも、今日完璧だったし……」
「じゃぁ、その、わざと失敗して、個人レッスン、する?」
「……いいの?」
「本当のこと言うとね、わたし、たまにそうしてたんだよ?だから、友香ちゃんがよかったら、お願い」
「ありがとう。それじゃ、これからも一緒にいられるね。私ね、ずっと一緒にいたかったから誘ったんだよ。それに、教え方も上手くならないように、って。そうしたら、もっと一緒にいられるから……。こんなの、変、かな?」
「そんなことないよ。わたしだって、友香ちゃんと一緒にいたかったんだもん」
「一緒だね」
「うん」
そっと友香ちゃんの手を握ると、握り返してくれた。
それが嬉しくて、友香ちゃんを見ると、照れてるのか顔を赤くしていた。
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