雨宿り

 突然雨が降ってきたため、梨恵は雨宿りをしていた。早く止まないかなぁ、と考えていると、クラスメイトの芽衣が慌ててやってきた。

「あ、梨恵ちゃんも傘持ってないの?」

「うん。芽衣も?」

「持ってないよ。だって、雨降るなんて今朝天気予報で言ってなかったもん」

 唇を尖らし、すねたように芽衣は言う。梨恵は天気予報は見ていなかったが、朝は晴れていたし、雨が降るなどとは予想していなかった。

 梨恵は隣を見る。自分の平坦な身体とは異なり、出るところはしっかりと出ている女性らしい身体のラインが、雨で濡れた制服が張り付くことによりはっきりと見えていた。そればかりか、その豊満な胸を隠す水色の下着までもがくっきりと透けていた。

「ねぇ、その、透けてるよ?」

「え?あ、本当だ。でも、誰もいないし、いいんじゃない?」

 周囲を見渡せば、確かに自分達以外には誰もいない。

 芽衣は男の視線がないから安心している。しかし、梨恵はそのことが少し寂しかった。

 わたしは?わたしはいるよ?それとも、わたしには見られてもいいの?

 そんなことを考えていたが、口には出さなかった。

「わたしだけじゃくて、梨恵ちゃんもブラ、透けてるよ?」

「え?」

 言われて梨恵は自分の胸を見る。芽衣とは対照的に小さく、平坦なそれ。そして、必要性をさほど感じられないが、着けている白いブラ。それを眺めていると、寂しくなった。

「ねぇ、誰も来ないと思うけど、その、ブラウスの下も拭きたいから、周り、見ててくれる?」

「うん」

 芽衣は後ろを向いてボタンを外し始めた。梨恵は周囲のことなど気にする余裕はなく、その胸に視線を奪われていた。

 すると、二人の耳に足音が聞こえてきた。人が近付いてくる。芽衣が汚される。そう思った梨恵は芽衣の身体を隠すように抱き締めた。

 そのまま、足音は遠ざかっていった。しかし、二人は同じ体勢のまま、動けないでいた。

「梨恵、ちゃん?」

 その言葉で我に帰った梨恵は身体を離した。

「あ、ご、ごめん。誰か来ると思ったから。その……」

「ううん。ありがと。ちょっと驚いただけだから。でも、うん、やっぱり我慢するね」

 芽衣はブラウスのボタンをしっかりと留めると笑顔を梨恵に向けた。その表情に自分の感情が抑えられなくなると思ったのか、梨恵は雨の中へと向かっていった。

「わたし、もう行くね。また、明日」

「え?うん、また明日」

 梨恵は走って帰っていった。頭に浮かぶのは芽衣の胸と笑顔。自分の体が熱くなっているのを感じていた。降り続ける雨がその熱を奪うことはなかった。

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