朝の一幕
朝、
まず最初にコーヒーメーカーでコーヒーを準備する。
次に、冷蔵庫を開け、ベーコンと卵を取り出す。
まず、フライパンに薄く油を引き、食べやすい大きさに切ったベーコンを炒める。ある程度火が通ったところで外側へ移動させる。そして、卵を二つ、割って入れる。そこに少量の水を加え、蓋をして蒸し焼きにする。全体に火が通り、しかし黄身は半熟、そんなベストなタイミングで火を止め、二つに分け、お皿に盛り付ける。
そして、別のお皿二枚を用意し、そこに手でちぎったレタスを敷き詰める。その上にミニトマトを三個ずつ、コーンを片方には少な目、もう片方にはその分多目に盛り付ける。
牛乳を温めつつ、それら四枚のお皿をテーブルに運び終えたとき、寝室の扉が開いた。
「しぃちゃん、おはよう」
そこから出てきたのはパジャマ姿の
二人は大学に進学すると同時に、実家を出てルームシェアをし、二人で暮らしていた。
「流音、おはよう。飲み物はいつものでいい?」
「うん」
詩代は返事を聞く前からマグカップに作っておいたコーヒーを注いでいた。そして、そこに温めた牛乳をたっぷりと注ぐ。その割合は4:6。さらに、砂糖を少量入れた。
そして、もう一つのマグカップにはコーヒーのみを注ぎ、テーブルに持っていった。流音には甘いカフェオレを、自分にはブラックのコーヒーを。
「いただきます」
流音がカフェオレを飲むと、幸せそうにしていた。詩代は、その表情が大好きだった。
「しぃちゃんのカフェオレ、甘くて美味しい」
「ありがと。あ!」
「どうしたの?」
「パン、忘れてた。ごめん、すぐ準備するね」
言うやいなや、詩代は立ち上がり食パン二枚をトースターにセットした。
「しぃちゃんでもそんなミスすることあるんだね」
「私はミスばっかりだよ。それをうまく誤魔化してるだけ」
「そうなのかなぁ?でも、わたし、ミスしてるとこ、あんま見たことないよ?」
「じゃぁ、誤魔化すのが上手いだけ、ってことかな?」
そんな会話をしているうちにパンは狐色に美味しそうに焼けていた。
「はい、流音はこれだよね?」
そう言ってパンとストロベリージャムを流音に渡した。
詩代はパンにマーガリンを薄く塗るだけで食べ始めた。その間、流音はたっぷりとジャムを塗っていた。パンが見えないほどに塗ると、流音も食べ始めた。
小さな口で少しずつ食べる流音。その姿は可愛らしく、詩代は食事を続けながらずっと見つめていた。
「ん?わたしの顔に何か付いてる?」
詩代の視線に気づいて流音はそう言うが、実際、口の横には赤いジャムが付いていた。
「うん、ジャム、付いてるよ」
詩代は指でそれを取ると、それをなめた。
流音みたいに甘くて、美味しい。ずっと、このまま二人だったらいいのにな。
詩代はついそんなことを考えていた。
「ありがと」
お礼と共に流音の笑顔が向けられた。詩代はそれだけで幸せになれた。
何気ない朝の一幕。けれども、詩代にとっては何よりも大切な、二人きりの時間。いつの日か、必ず終わりは来る。けれども、今は、今だけはこの幸せだけを感じていた。
決して言うことはない恋心を胸に抱きながら……。
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